第9話

 テレビで活躍できなかった幸子を、須藤は映画の世界に誘導した。

 そこはテレビよりもずっと厳しい世界だった。

 職人気質で気難しく潔癖で、そのくせ狭量でわがままなオトナたちがあふれていた。

「こんなことしちゃいけないってわかってる。でも、好きなんだ」

 迷いの言葉を口に出した三分後に、男は幸子の股に顔を埋めていた。

「こんなことばかりしてたらダメになる。もう、やめるんだ」

 そんなふうに言う男に、馬鹿らしいと思いながら幸子は弱弱しく体を預けた。

 そして、偶然を装い、手のひらの背で男のそこをさらりと撫でた。

 幸子の体を押し返す煙草臭い男に、その動作を二度三度と繰り返す。

 男のソコはたいてい幸子の薄い手のひらの背中を、強い力で押し返しはじめる。

 すげ~たってんじゃん。

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