選んだ扉は

「船は忘れずにしまって・・・と。よし・・・何も無いな・・・あるか?神殿・・・」


「・・・ないのう」


「ないよね・・・」


「砂の中にあるとか?なぁセイナの眷属の話だと神殿はどこにあるんだ?」


「それが・・・ダンジョンの入口を知っておる眷属も数百年前の事を教えてくれただけでのう・・・」


「うーん・・・とりあえず・・・ダメ元で砂でも掘るか?」


「・・・そうね」


スコップを交換し、それぞれに渡して穴を掘り始める3人。


「なぁこれって・・・」


「階段じゃな」


穴を掘ること20分。蓋のようなものが出てきて開けてみるとそこには階段があった。


「階段が塞がらないようにもうちょっと周りを掘っておくか」


なんだかんだ30分ほどかけてあらわになった階段の周りは大理石のようだった。


「もしかして・・・神殿があったけどなんかの理由で上側だけなくなったのかな?これどう見ても大理石だしな」


「何はともあれ降りてみるのじゃ」


階段を降りるとどういう訳か島よりも広い部屋に出た。懐中電灯を取り出しあたりを照らす。


「あれは・・・魔法陣じゃない?」


レイラが光を向ける。そこには埃がかかっているが魔法陣が刻まれていた。


「他には何も無さそうだしな・・・試しに魔力を流してみるか」


踏んでも触っても反応の無い魔法陣に魔力を流すカナト。流れている手応えはあるものの中々起動しない。そうして1分ほど魔力を流すと魔法陣が輝き始めた。


「どうやら魔力切れだったようじゃな。この魔法陣」


「にしても吸い取りすぎだけどな・・・じゃあ乗るか」


魔法陣は無事起動し、3人はダンジョンの入口へと転移した。


「湿っぽい洞窟だななんか」


ダンジョンの通路はごつごつした岩で囲まれ常にどこからか水が滴っている。マップを展開し銃を抜くカナト。


「よし行くか」


こうして海底神殿のダンジョン攻略は始まった。他のダンジョンよりもギミックがメインで魔物もスライム系がメインらしい。 宝箱も多く点在しているらしく、そのどれもがレアリティの高いものだった。


「そしていきなり見つかるとか・・・まぁいいんだけどなんか拍子抜けだなこれ」


カナトが手にしているのは暴食のフォークと憤怒の面。暴食の鍵と憤怒の鍵はこれで素材が揃ってしまった。


「とりあえず行くか・・・他の大罪関係も揃うかもしれないし」


「そうじゃのう。眷属の話でもここは特殊らしいしのう」


「・・・ところでその眷属ってこんなとこまできたのかな?」


「元々妾は何人かの力ある眷属共に命じておったゆえな。各地に散って情報を集めておれと」


「さすがセイナね。抜かりがないと言うか」


「情報は何よりも重要じゃからのう」


「あ、そういやこれ。一応嵌めといて」


カナトはセイナに経験値倍加の指輪を手渡した。


「主様これは・・・妾と・・・」


指輪を左手の薬指に嵌めて頬を赤らめるセイナ。


「あ、そのくだりはもうレイラがやってるからいいよ。つけたら残りのもほら」


「ふ、複雑じゃ・・・」


これでセイナとレイラの経験値は1024倍。カナトもいつも通り2048倍だ。


ヒメヤマカナト

年齢15

人間

レベル10,721

HP536,050

MP628,320

強さ268,025

魔力314,160

素早さ134,012

賢さ157,080

スキル/料理極/読書極/掃除/インターネットショッピング/魔力感知極/魔力操作極/マップ化//全耐性極/移動術極/クリティカル極/必中/マルチタスク/身体強化極/魔力付与極/属性付与極/多重展開極/体術極/解体術極/異世界言語/経験値倍加/空間跳躍極/神代錬金極/神薬調合極/闘神極/眷属強化/眷属支配/性技極/

魔法/回復魔法極/時空間魔法極/究極召喚魔法極/精霊魔法極/ソウルドレイン極/

カルマポイント15

称号/迷子の極み/極めた者/色欲を従える者

TBC3950.3320


セイナ・レースバック

年齢19,255

魔族/サキュバス神祖

レベル3721

HP186,360

MP176,887

強さ93,180

魔力88,443

素早さ460,90

賢さ44,220

スキル/気配察知/全耐性/魔力操作極/魔力感知/身体強化極/性技極/鞭術極/眷属支配極/

魔法/誘惑魔法極/幻惑魔法極/ソウルドレイン極/火焔魔法極/

称号/極めた者/性なる者/神祖/真なる女王/鞭使い


レイラ・レイナース

年齢19

人間

レベル1,209

HP47,981

MP12,090

強さ23,990

魔力6,045

素早さ11,995

賢さ3,022

スキル/気配察知/解体術/身体強化/剣術/体術/魔力感知/剣技向上/剣気操作/全耐性

魔法/回復魔法/風魔法/火魔法/

称号/子供想い/剣の道を往く者


「こうしてみると随分上がったな・・・」


「どうしたの?」


「いやステータスを確認してたんだよ」


「私もこんなに上がるなんて・・・あとはスキルを少しずつ上げていかなきゃ!」


「妾もこの歳このレベルでさらにレベル上げが出来るとはのう。経験値倍加の指輪なぞ妾の宝物庫にも無かったぞ」


「やっぱかなりのレアリティか」


セイナが指輪を撫でる。


「今は知らぬが・・・少なくとも妾はこのような経験値に作用する魔道具など知らぬ」


「てことはこっちに来てる人間は少ないのか・・・?」


それともセイナの時代には来ていなかったということだろうか?それとも・・・異世界人に関する情報は消されている。もしくは秘匿されている?


「・・・考えてもキリがないか・・・」


ギミックを起動して迷路のような迷宮をひたすら降る一行は15階層に入って1度足を止めた。


そこはこれまでのギミックメインでスライムばかりの階層とは違い、20m先にゴーレムが20体も立ち並ぶ大きな部屋だった。恐らく100m四方はありそうだ。


「奥に扉も見えないし・・・もしかしてボス部屋?」


「ふむ・・・どうじゃろうか?奴らを蹴散らせば答えも分かろう」


セイナが鞭に魔力を込めてゴーレムの脳天目掛けて振り下ろす。空気を破裂させたような凄まじい音が部屋に響き、ゴーレムは脳天から唐竹のように真っ二つに裂けて倒れた。


「ただのストーンゴーレムかえ?」


訝しげな目で様子をうかがう。


「動く気配も無さそうね。今のうちにやっちゃう?」


「いや・・・ゴーレムの足元・・・あれスライムか?」


カナトがゴーレムの足元に溜まっている水溜まりを睨む。真っ二つに裂けたゴーレムは足元から湧き上がる水に包まれるとゆっくり復元していく。10秒ほどで復活したゴーレムは立ち上がり、大きく足を上げた。


「何をするつもりだ?」


注視しているとゴーレムは足に魔力を溜めてダンジョンの床を踏みつける。その瞬間部屋全体に筋のような青い光が走り、他のゴーレムの目が光りだした。どうやら一斉に起動したようだった。


「一応気をつけよう。復活する事も視野に入れつつ1度普通に全部倒してみるか」


カナトの言葉に2人は頷き、レイラは龍滅刀に魔力を込めゴーレムの一体に向けて刃を飛ばす。セイナは先程と同じように鞭を振りかぶり三体を続けざまに引き裂く。カナトは魔力を込め近い個体から順番にレールガンを放っていく。


ゴーレムの耐久力はさほどでも無いらしくレイラの攻撃でも十分破壊できた。全て破壊し、様子を見る3人。すると先程同様に足元から水が湧き上がりゴーレム達を包んでいく。先程と違うのは修復する際に2体が1体に合体している所だろうか。20体だったゴーレムは一回り大きくなって10体に数を減らした。


「これまさか最後は1体になるやつかな?」


「可能性はあるのう」


「復活したら即叩き潰してみよ!」


レイラは気合いを入れて復活したゴーレムに斬りかかった。ギャリンっと硬質な音を響かせてゴーレムの腕を浅く切り裂く。


「さっきより防御力・・・いや性能が上がってる?」


セイナも鞭を振り下ろす。こちらは先程と同様に裂けて倒れた。


「レイラの攻撃があまり通ってないところを見るとどうやらレベル1000前後になったと見るべきかのう」


ふむ。と、考察しつつカナトとセイナは残りを倒していく。


「10体が5体になったか」


「今度はどうじゃろうのう?念の為レイラは手を出すでない。恐らくかなりレベルが上がったと見るべきじゃろう。それでも妾の攻撃はまだ通じるようじゃが・・・のう!」


一撃で引裂く事は出来なくなったが数回鞭を振り下ろすだけでゴーレムは粉々に砕ける。カナトもレールガンでゴーレムの体を蜂の巣にしていく。


「問題は次かな?」


カナトが倒れたゴーレムを見ていると、5体は1箇所にかき集められて合体した。それは先程のゴーレムの5倍・・・約25mほどの巨大なゴーレムが立っていた。試しに魔力を込めたレールガンで撃つと綺麗な穴が出来たが数秒で塞がってしまう。


「一応これが最終形態かな?復元するけど攻撃が通らない訳じゃないからいけるか」


「妾の方はただの鞭じゃダメなようじゃな」


バチンとセイナの鞭がゴーレムを捉えるがヒビひとつ入っていない。


様子を見ているとゴーレムの両手に魔力の高まりを感じる。


「なにかしてくる。2人は一応下がってて!」


カナトの声に後方に飛ぶレイラとセイナ。


ゴーレムは魔力の籠った両腕を振りかぶり同時に地面に叩きつけた。一瞬の地鳴りの後で部屋の至る所から核を中心に魔法陣を体内に取り込んだような10mクラスのスライムが数十と湧いて出てきた。


「なんだあのスライム・・・」


「あれはまさか暴食種かのう。だとしたら主様これは厄介じゃ」


「知ってるのか?」


「知っておる。八王の中にはスライムの神祖がおるんじゃが・・・やつの眷属で最も恐れられたのがあれら魔法陣を内包した暴食種と呼ばれるスライムなのじゃ」


「そのスライムの特徴は?」


「動きは遅いし攻撃力も無いんじゃが莫大なHPと物理ダメージ無効を持っておる。魔法陣の中心に核が見えるじゃろ?あれが唯一の弱点じゃが硬すぎる。そして一番厄介なのがスキル吸収じゃ」


「えっ!それってスキルを奪われるってこと!?」


レイラが思わずセイナに問いかける。


「そうじゃ。やつに触れた瞬間から10秒も経たずにスキルを1つ食われる。しかも吸収したスキルを使ってきよるしな。以前戦争であれよりでかいのを見たことがあるが数百人のスキルを吸収したあれ一体に敗走したこともあるくらいじゃ」


「そりゃまた厄介な・・・けど触れなきゃいいんだろ?セイナはいけそう?」


「うむ。妾の力で核は中々砕けぬが・・・じゃが体を構成しておるぶよぶよが全て消えれば消滅しおる!という事で魔力でゴリ押しじゃ!」


セイナは鞭に火焔魔法を込める。ゴウっと鞭が燃え上がりスライムを四方から八つ裂きにしていく。ダメージが入ってるようで徐々にだが小さくなっていくスライム。カナトも通常のレールガンでは一撃で核を撃ち抜けなかった為、一撃一撃に数秒魔力を溜めて核を撃ち抜いていく。その間にもスライム達はゆっくりと間合いを詰めてきていた。


「ちっ。燃え尽きるのじゃ!燼滅鞭!」


打ち付けられた鞭はスライムを真っ二つにして床に叩きつけられる。と、同時に床に魔法陣が浮かび上がり爆炎を噴き上げた。爆炎は渦を巻きながら火災旋風のように天に向かってのびている。30秒ほど全力で魔力を込め続けるとスライムは段々小さくなって消滅した。そこには大きな魔石がゴロンと転がっているが、一気に魔力の1割弱を使ったセイナは肩で息をしている。


「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。次じゃ!と言うか主様は攻撃力がありすぎるのう。頼もしい限りじゃが」


セイナがちらっと見るとスライム達を一撃で消滅させているカナトが映る。セイナが一体をようやく倒しきる頃に、カナトはスライムを12体も倒している。


「カナト!あのゴーレムまたやる気みたいよ!」


後方に下がっていたレイラがいつの間にかスライム達に隠れるように下がっていたゴーレムの動きに反応する。


「ゴーレムは召喚係か?くっそめんどくさいな!」


セイナの消耗を見る限りさっさと倒した方がいいと判断する。カナトは振り上げたゴーレムの腕を撃ち抜き両肘を吹き飛ばした。


「セイナ!スライムはおれがやるから少しの間ゴーレムの足止めをしててくれ!」


「任せるのじゃ!」


カナトが13体目のスライムの核を撃ち抜く。走り出したセイナはゴーレムの腕を修復しようと湧き上がる水に燼滅鞭を叩き込む。燃え上がる火焔によって水がボコボコと沸騰して蒸発している。どうやらあの状態では修復出来ないようだ。


「よし!足止めは大丈夫そうじゃ」


「こっちもあと6体だ!すぐ行く」


残りのスライムを魔石に変えて魔力を込めながら空間跳躍極でゴーレムの目の前まで移動する。レールガンで顔面と胸と腹部に3発叩き込み大穴を空けた。


「いけたか?」


数秒してガラガラと音を立てて崩れ去るゴーレム。修復の為の水も湧いてこないようで魔石が転がっていた。


「転移陣かな?あれ」


レイラが指さす方向に視線を向けると床が光っていた。近づくとどうやら転移陣のようだった。


「・・・宝箱もダンジョンコアもないって事は別の部屋に飛ばされるってことかな?」


3人は転移陣に乗り、予想通り違う部屋へと転移する。今度の部屋は道を作るように石像が並べられていた。


「神殿ぽいな」


「ね!なんか厳かな雰囲気漂ってる!」


数十と並ぶ石像はどれも美しい翼の生えた女達がモデルのようだ。ちらっとセイナを見ると目に怒りを宿している。


「セイナ・・・もしかしてコイツら」


「そうじゃ。天使共じゃ」


そう言ってセイナが鞭で石像を壊す。


「・・・ただの石像のようじゃな」


「ってことは海底神殿ってゆーのは・・・セイナの言ってたまがい物の神様の方の神殿ってことなの?」


「ううむ・・・そこはなんとも言えぬ。やつらの石像やレリーフは至る所にあったからのう」


一つ一つ石像を覗き込むようにして道を進む。


「ただ前に話したようにセイナを閉じ込めた天使やその神様ってのがダンジョン主だとしたらここも何か関係あるかもな。じゃなきゃこんな石像わざわざダンジョンに置かないだろうし」


「うむ。やはり恐らく島にも神殿があったと考えるべきじゃろうな」


石像の道を抜けた先は小さな扉が3つあった。それぞれ扉には何か書かれていた後がある。


「もしかして・・・いや・・・まだそうと決まった訳じゃない」


「主様?」


「どうしたの?カナト」


カナトは銃で一番左の扉を吹き飛ばした。杞憂だったかと息を吐いた瞬間背中に嫌な汗が流れた。1番左は開いている。そして残り2つの扉が消えていた。


「・・・マジか・・・」


「カナト?」


カナトの様子に心配になるレイラ。セイナも同様のようでカナトの横顔を見つめている。


「悪い。恐らく罪の扉を開けちまった」


「罪の扉って何?」


「ふぅ・・・整理も兼ねてちょっとここで休憩しない?今飲み物出すよ」


ストレージから飲み物を出して2人に手渡す。これがもしも罪の扉なら・・・と言うかおれ一人ならいい。けどレイラとセイナが一緒だぞ?どうする?通っていいのか?


「あ、そうだ。アイ!出てきてくれ。2人はちょっと待っててくれる?」


顔を見合わせてわかったとぎこちなく返事をする2人。気づくとアイが肩の上で仁王立ちしている。


「私に何か用かなー!?」


「ああ、あの扉について聞きたい」


カナトが指をさす。


「扉は粉々・・・と言うかこれ罪の扉じゃない?他にも扉なかった?」


「あった。やっぱりそうか・・・で、あそこを通ったらどうなる?」


「全員で?」


「そう」


「んー・・・多分影響あるのはカナトだけかなー?あれってふるいみたいなものだから!」


「ふるい?」


「そそ!小さい魂だとすり抜けちゃうけどカナトみたいに異世界の人の魂は大きいから!だから通るなら何かしらの影響はあると思う!」


「なるほどね・・・その影響は通らないとわからないか」


「そゆこと!でも嫌な感じはしないかなー!」


「ちなみにさ、空に天界に繋がる入口があるらしいんだけどそこに神様っていたりする?」


「いないよ!」


「・・・じゃあ何がいる?」


「罰の人だねー!」


「罰の人・・・異世界人ってことだよな?」


「そうだよ!なんでかわかんないけど!」


ふよふよと漂うアイ。可能性の1つとしてはあった。そしてこんな所に不自然に置かれた石像・・・その異世界人が関わっているとみて間違いないだろう。


「おれはもしかして手のひらの上なのか?くそ!」


ぶつぶつと独り言を呟き珍しくイラついているカナトを見て不安になるレイラとセイナ。


「カナト?」


「ああ。悪いもう少し考えさせてくれ」


タバコに火をつけて心を落ち着かせる。


「でも3つあったのに今これしかないってことはもう選んじゃったって事だよ!」


「・・・確かにアイの言う通りだな。ってなると通ることは確定ってことか・・・」


「主様・・・その・・・そこを通るかどうかで何やら悩んでおるようじゃが・・・妾達は主様に着いてゆくぞ」


「うん!私達がついてるから安心してカナト」


「2人とも・・・ありがとう。そうだね・・・悩んでても仕方がないか」


タバコを靴裏で消してふーっと息を吐く。


「よし。行こう」


どこかスッキリしたような顔でカナトは言った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罪と罰~罪編~ ようすけ @Joy-of-love

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ