036 意味が分かると怖い話、俺は大抵分からない

 ちょっと何言っているか分からない。首ポロだって? 幾ら何でも特殊過ぎるだろ。


「私はね……バラバラ殺人の中でも、特に首ポロにこそ美学があると思っているんだ。美少年たちは殺される瞬間……一体何を考え、何を思っていたのだろうか? どんな苦痛や恐怖を感じていたのだろうか? 可能であれば、私はその答えを知りたい……! その頭部を手に取り、そして語り掛けたいよ! ああ、想像だけで凄く興奮して来た……!」


 控えめに言ってヤバかった。俺の貧乳好きの性癖なんて可愛いものだ。


「まあ首ポロに限ったことじゃなく、正確に言えばバラバラ殺人なら何でも興奮するよ! 腕ポロもいい、足ポロもいい、胴体の欠損もまた魅力がある……。私は昔、自分の右腕を自ら切り落としたんだよ。興味本位だったけど、それはもう本当に興奮したね……。アドレナリンが出て、痛みなんて一切無かったんだ。癖になる気分だった……。だけどその代償に、存在しないはずの右腕が今になって疼いているのさ……」


「特殊性癖なのね。確かに、なんとなく気持ちは分かるわ……。でも今は部屋が大事なの。その部屋はあたしの物よ。今すぐ契約するわ……」


 さくもは、何故か濃月さんの気持ちが分かるらしい。爬虫類食べてたし、彼女もある意味特殊だからな……。一方で充子は、さっきから無言になり、顔色が曇っているので多分ドン引きしている。黒魔術どころの可愛い話ではないからな。


「よし、じゃあ楽しい話はこれぐらいにして物件に案内しよう……」


「必要無いわ。先に契約書にサインさせてもらうわね」


 どうやらさくもは、服を試着しないで買うタイプらしい。


「下見は……いらないんだ? 頼もしいね。じゃあ、これが契約書だよ。後からのクレームは受け付けないからね」


 濃月さんは、さくもにシミだらけの契約書を渡す。そのシミを見る限り、やはり俺らが久し振りの客である上に、さくもが久し振りの契約者となったことは間違いない。まあ、当然だろう……。


「あ! そうそう……」


 さくもが、契約書にサインをしている最中、濃月さんは何故か俺に話し掛けて来た。


「例の帯人町大量殺人事件、警察はまだ犯人の情報を一つも入手出来ていないみたいなんだ。犯人の年齢や性別さえも……。別に、君が住む訳じゃないからいいけど、ちょうど君みたいな容姿の可愛い男の子が沢山殺された……。念の為、これから背後には気を付けるんだよ?」


 濃月さんは、何だか凄く嬉しそうだった。

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