024 風呂を覗く、俺は変態

 外は、裸で歩いてもそこまで寒くなかった。ちょっと前だったら、全身ブルブル震えながら温泉に向かう羽目になっていただろう。石が敷き詰められた道をちょっと歩いたら、屋根付きの貸し切り露天風呂だ。


 竹で造られた仕切りの向こうから、さくもと亜房先生の声が聞こえる。


 いざ混浴となれば、体は動かないものだ。俺は、ウォーミングアップの意味も込めて、仕切りの前まで近づくと、隙間から中を覗いてみた。


「うおっ!?」


 思わず声が漏れた。


 慌てて口を塞ぐが、どうやらアルコールが回っている二人の耳には聴こえていないようだった。


 さくもが、立ち上がって酒を飲んでいた。ストゼロを手に持ち、腰に手を当てている。巨乳おっぱいだけでなく、下も完全にオープンだった。罪悪感を覚えながらも、我が目にしっかりとその光景を焼き付ける。


 女性のお風呂を覗くのは、男のロマンである。こんな機会は二度と無いだろうから、しっかり堪能しなければならない。


 しかし、さくもの体は素晴らしい。エロさと同時に美しさも感じる。きっと、女性が理想とする体型だろう。朝っぱらから酒を飲み、時には爬虫類を貪る彼女が同一人物だとは信じ難い。


 また、亜房先生は、タオルでしっかりおっぱいまで隠していた。さくもの隣で、ちびちびとストゼロを飲んでいる。


「てか、りんごと充子ちゃん、遅ぇな! 何やってるんだよ全く! 早くしないと、酒が無くなっちまうぜ!」


「多分、もう来るんじゃない? ボクも楽しみなんだけどな……」


 あまり待たせても悪いかな……。


「お、おい、さくも! 亜房先生! は、入るぜ!」


 急に入ったら、デリカシーが無いと思われるだろう。覗きはここまでにして、ちゃんと一声かけた。


「おっ? りんご! いいぜ、入れよ!」


 俺は唾をゴクリと飲み込み、仕切りの内側へと入った。いよいよ……混浴だ。直前まで立ち上がっていたさくもは、下を隠すと言う意味でも、流石に湯の中に肩まで浸かっていた。


「ほら、おいでよ。有江くん……。ボクの隣に来るかい?」


 亜房先生は、両手を広げる。本当は、その手の中に飛び込みたいが我慢する。俺は冷静に、桶で湯を汲んで、全身を流し、そっと湯船の中に入った。隅っこで、一人寂しく座る。


「ほら、隣においでよ? 大丈夫だよ」


 いざとなったら難易度が高い。これでも十分近過ぎて、目も合わせられない。


「恥ずかしいの? 困ったね……。じゃあ、ボクが行くよ……」


 亜房先生は、立ち上がった。濡れたタオルが身体に張り付き、ラインを強調している。さくもと比べて貧相な身体だが、やはり大人の色気をビンビン感じる。


 ゆっくり、亜房先生は俺の元へと歩いて来て、そして肩がくっつく程の距離に座った。


「やっぱり、年頃の男の子は可愛いね」


 亜房先生は、俺の照れている顔を覗き込んで笑っている。どう反応していいか分からない。


「あ、りんごぉ! 背中流してやるから、シャワーの前に座れよ!」


 ほ?


「あらあら、有江くん、もう呼ばれちゃったね。行ってきな。隈なく、綺麗にしてもらいなよ?」

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