023 黒魔術の真実、俺はバカだからまた騙された

 充子と二人きりになって、急に部屋が静まり返った。


 畳の上に、さくもの着ていた衣服一式が散らかり、亜房先生は、全ての衣服をカバンの中にしまっていた。さくもの脱ぎ立てパンツはあるが、亜房先生の脱ぎ立てパンツを見ることは叶わなかった。


 そして、部屋の外の温泉からは、「乾杯」の激しい号令が聞こえてきた。先に二人は、宴会を始めてしまったらしい。


「りんごくん、ごめんね……。私、やっぱり恥ずかしいよ……」


 まだ充子は丸まっている。


「気にすんな……。あの二人が異常なんだよ。特にさくもに関しては、アイツは女じゃねぇ……」


 身体は間違いなく女性だが、もっと恥じらいがあってからこそ、裸に価値が付くものなのに。


「一つ、謝らないといけないことがあるの……」


「何だよ?」


 ここで少し、充子は言葉を詰まらせたようで、再び外にいる二人の騒ぎ声がよく聞こえ始めた。


「あ、あのね……」


 ようやく振り絞った「あのね」から、10秒ぐらい沈黙が続いた。その間、俺は下心丸出しで充子の背中に視線を向けていた。


「さっきのタピオカミルクティーの黒魔術は、本当は私の作り話なの……。混浴したくなる呪いってのは嘘……。ごめんなさい……」


「え? あ、ああ……」


 俺は、てっきり今回の黒魔術こそ本物だと信じていた。だからこそ、余計に混浴に胸弾ませてしまっていたのだと思っていた。


「わ、私って、意気地無しだよね……。結局、やってることは全部空回りしちゃうんだもん。だから余計に焦って、バカなことをしちゃうの。バカは、りんごくんの専売特許なのにね……」


 軽くディスられた気がした。


「せっかくみんなで温泉来たのに……。私、恥ずかしくて一緒に入れないよ……」


 俺は、襖の中に準備されている一番大きなバスタオルを手に取って、充子の手元に向かって投げた。さっき、亜房先生が体に巻いていたものと同じやつだ。


「俺、先に温泉入るからさ……。もし、来れるんならそのタオル巻いて入れよ。本当に無理なら、俺がすぐ温泉出るから、それから女性3人で入りな。それなら、お前もちょっとは楽しめるだろ?」


 俺は、シャツを脱いで、下も全部脱いだ。タオルで前を隠し、外へのドアをガラッと開ける。


「じゃあ先に行くからな? 充子、無理すんなよ?」


 充子を部屋に一人残し、俺は、二人の獣……さくもと亜房先生の待つ温泉へと向かった。

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