019 また黒魔術、俺は間接キスで何気にドキッとする

「お、りんごと充子ちゃん、ラブラブだなぁ!」


 前方を歩いていたさくもが茶化してくる。さくもと亜房先生だって、当然の様に腕を組んで、十分ラブラブに見える。


「さくもちゃん、ボクらも負ける訳にはいかないね。あとで、もっと派手なことをやろう」


「流石、亜房先生! エロいねぇ!」


 一体、何をやるつもりなのだろうか。良からぬ妄想をしてしまい、つい体の芯が熱くなる。あの二人なら、女性同士でも何処までいくのか見当がつかない。


「りんごくん、一緒に温泉は初めてだよね?」


「そ、そうだな……」


「嬉しい?」


「えっ? ま、まあ嬉しいぜ……」


「あの二人が居なければ、もっと良かったのにね……」


 充子のキャラ、最近になって全く解らない。以前の大人しめの印象とはかけ離れている。これまで俺の周りに女性なんて集まらなかったから、充子の本性が明らかになることは無かったのだろう。


「お、唐揚げがあるぞぉ! つまみになりそうだ! ちょっくら買って来るぜぇ!」


 前方で、酔ったさくもが声を荒げた。


「あ、待って。今回の旅行、ボクが招待したんだから、ボクがお金出すよ」


「亜房先生、イケメンだね!」


 二人は、店の間のスペースにある出店で、唐揚げを購入する。俺は昔から不思議に思っているのだが、何故、温泉街には唐揚げやコロッケと言った揚げ物が名物と化している所が多いのだろうか。大体が「金賞受賞」って書いてあるけど、怪しい。


「りんごくん、私、タピオカ飲みたいな……」


「え? こんな山奥の温泉街にタピオカなんてあるのか?」


「あそこ……」


 充子が唐揚げの出店の横を指差す。


「マジか!」


 最近は、温泉街にまでタピオカは進出しているらしい。ログハウスでやっている店は、タピオカ屋であった。ちゃんと、雰囲気は温泉街に溶け込んでいた。


 俺と充子は、タピオカ屋に向かう。小洒落た窓から注文するシステムだ。


「りんごくん、私、一人じゃ飲めない……一緒に飲んじゃ、ダメかな……?」


「ほ? あ、ああ……。普通のミルクティー味でいいか?」


「うん……」


 俺は、タピオカミルクティーのSサイズを購入した。店員さんは、手慣れた動きでもちもちのタピオカを入れ、ミルクティーを注ぎ、封をする。そして最後に、例の太いストローを刺して、俺の500円玉と交換した。


「ほら、奢りだ。先に飲めよ」


 店員さんから受け取ったタピオカミルクティーを充子に差し出そうとする。しかし……。


「ありがとう。りんごくん、でも先に飲んで……」


「え? う、うん」


 俺は、言われた通りにタピオカミルクティーをすぽんすぽん飲んで、充子に渡す。


「美味しいな……はい、充子」


 充子は、顔を真っ赤にしながらストローを咥えた。


「ふふっ、私達も間接キスだ」


 そして、充子もタピオカミルクティーをすぽんすぽん飲んだ後、また恐ろしい一言を言い放った。


「りんごくん、今度こそ黒魔術は成功よ」


 なん……だと……?

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