第27話 千歳との密談
衝撃的なLHRの翌日。やはり教室はピリピリしたムードが漂っていた。俺を敵視する目ばかりで流石に居心地悪く感じる。松田や吉崎さん、小山田辺りは普通だが。
すると、斎藤さんがこっちに近よってくる。吉崎さんに用があるのだろうか?
「あ、赤坂君。少しいいかな」
「…ん?俺?」
すると斎藤さんは頷く。そして
「私、赤坂君が犯人じゃないって、信じてるから!犯人探し、するなら協力させてほしいな」
と、人手不足の俺らにとんでもなく助かることを言ってきたのだった。
「なぜ俺が犯人じゃないって断定する?」
「そ、それは…」
斎藤さんは俺の耳元に顔を少し寄せて
「い、いや、赤坂君、吉崎さんのこと好きでしょ?そんな人が加藤さんの体操服盗ったりしないだろうなって」
…そんなに周りに吉崎さんとのことバレてたのだろうか?
「い、一応先生にも言っておいたから!」
…すごい行動力だな。これなら体育大会のとき協力を頼むのも本気でアリかもしれない。
「ありがとな。でも、俺の無実は昨日の時点で先生には言ってきたから」
「先生言ってたよ!すごいね赤坂君!」
こうして俺は朝礼まで斎藤さんと話してた。なぜか優花がこちらをちらちら不安そうな目で見ていたが、どうしてだろう?
「すまん。お前らに1つ言っておくことがある」
朝礼が始まると開口一番担任は切り出した。
「昨日赤坂が加藤の体操服を盗ったとのことだったが、それは不可能だと証明された」
生徒達が騒ぎ出す。
「じゃあ犯人は?」
「赤坂じゃなかったのかよ!」
「どうせ裏から手を回したんだろうよ」
担任は、静かにしろ、というと
「そしてそのあとタレ込んできた奴に確認したら、記憶は曖昧ではっきりと顔は見ていないそうだ。赤坂、昨日は悪かったな」
そういうと担任は頭を下げる。しかし、委員長の優花がそんな曖昧なことを言うか?俺は胡散臭さを感じながらも
「…別にいいです。やってないのが分かってもらえればいいんで」
と言っといた。
「マジで犯人誰なん?」
「さあ?」
「いやいや、絶対先生が弱み握られてるだけだって!犯人は赤坂だよ」
「そうそう!だってやりそうな顔してるじゃん!」
「それに松田の財布のこともあるからね。赤坂が怪しいことに変わりはないよ」
…顔で判断するなよ!と言いたくなったが抑える。これで少しは落ち着いてくれるといいんだがな…まあ無理か。
昼休み。俺は机に突っ伏していた。
1時間目が終わった休み時間から、クラスメイトが俺にずっと付き纏って謝ってくるからだ。
「すまん赤坂!疑うようなこと言って!」
「あー、いいから気にするな」
朝からこんなやり取りだらけじゃ疲れるだろ?そうしているとさらにめんどくさい奴がとんでもないことを言い出した。
「なあ赤坂!今日の帰り時間あるか?みんなでカラオケとか行こうぜ!奢るからよ!」
「え?俺が?なんで?」
「そりゃ、悪いと思ってるからだよ。今日くらいは頼むよ、な?」
正直、こいつらを信じるのが難しかったが、断るのも悪いと思い
「少しだけだったらな」
「ありがとう!」
俺は頭を掻きながら、弁当を持って立ち上がる。弁当は千歳が朝張り切って作っていた。
「よかったじゃない。信じてくれる人がいて」
「…タレ込んだのはお前だろ。なんでお前がそんなことを言う?」
吉崎さんが言うことではない。茜と連んで俺を犯人にしようとしたんだろう。
後ろで吉崎さんが何か言おうとしていたが、話す気も起きないので屋上に向かうことにした。
「おやおや先輩。待ちくたびれましたよー」
…?ここにいてはいけない人物の声がしたぞ。
「おーい先輩。僕がわざわざ来たのに挨拶もなしですかー?」
「いや、なんでいるんだよ!」
千歳はまだ入学してないだろ!普通に不法侵入だ。
「いやいやー。ここに入学することは決まってるんで、制服買って来ちゃいましたー。似合います?」
そう言うと千歳はその場でクルクルと回る。確かに可愛い。
「まあ、似合ってるんじゃないか?」
「またまたー。素直になったらどうですかー?素直に可愛いって言えば許してあげますよー」
「さぁな」
俺は千歳を無視して弁当を食べる。…って滅茶苦茶美味い!
「どうですか?美味しいでしょう?」
「ああ。美味いな」
「良ければ毎日作ってあげましょうかー?」
「…いいのか?」
「ええ。僕は先輩の可愛い後輩ですからねー」
千歳の美味い弁当をあらかた平らげた後、俺は松田を呼び出すために携帯を手に取り松田にメッセージを送ろうとすると
「先輩。何してるんですかー?」
「これから体育大会の打ち合わせをするんだよ」
「ははぁ。茜さんと吉崎さんの監視ですかー?相変わらず頭はいいのに的外れですねー」
的外れ?どういうことだ?
「そうですねー。先輩、まず先に言っておきます。犯人は吉崎優花でも神崎茜でもありませんよー。今回のことも、過去のことも」
「は?」
何を言ってるんだ。凛が死んだのも全て、茜のせいだろ…
「はぁ…鈍感ですねー。なんで茜さんが犯人だと思うんです?」
「茜と吉崎さんが裏で繋がってて、吉崎さんがクラスメイトのものを…」
「馬鹿ですねー。僕は先輩がこんなに馬鹿だと思いませんでしたよ。茜さんはただの被害者。そして同時に敵となり得る存在。それはクラスメイト全員にも言えることですよー」
何を言っているのか分からない。被害者であり敵?犯人ではない?茜が黒幕だろ。あれ?なんで?…
「…先輩」
「ん?」
「先輩は今、誰かを心から信じられますか?」
………その質問に対して俺は答えられなかった。いや、2人だけいるのだ。
「…松田と、千歳、お前…かな」
千歳は満足そうに頷くと
「ええ、そう言ってくれて後輩として嬉しい限りですね。そして、この先輩に従順な後輩である僕が先輩に問います」
そういうと、千歳は純粋な、そしてまた悪魔のような笑みを浮かべながら
「先輩はこれから、どうしたいですか?」
と聞いてきた。どうしたい…
「放っておく、ことはしないでしょう?」
「ああ、こんなことされて、黙ってはられないな。解決できるものならさっさと解決したいな」
冤罪突きつけられた挙句、凛や美咲の時と同じやつがやってるなら、なおさらだ。平穏な生活を邪魔されることだけは許せない。
「ですよねー。流石、先輩です」
さて、と一泊間を置いて千歳は改めて口を開く。それと同時に授業開始5分前の予鈴も鳴った。千歳は気まずそうな表情を浮かべて
「なんだか締まりませんねー。まあいいや。続きは家で。答え合わせをしましょう」
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