バレンタインから始まる奇妙な恋愛。恋愛に期限なんてありますか！？

第26話 邂逅(優花視点)

「ど、どうかしましたか？」

「いえいえー。赤坂先輩を追いかけてきたら思いがけない人と出会ったなぁと思いましてー。僕の勘違いでしたねー」

「そ、そう。それじゃ私はこれで」

「おやー？行ってしまうのですかー？」

　後ろからする声を無視して歩く。あの人はご近所さん。それ以上でもそれ以下でもないのだから。

「待ってくださいよー。せっかくの再会なのに冷たいですねー。僕は泣きたいです…」

「あら？あなたと私は初対面でしょう？」

「…そーいうこと言って、また逃げるんですね。赤坂先輩を置いて逃げたあの時のように」

　………私は止まりかけた足を無理に前に出しながら返した。

「さ、さあ？なんのことかしらね。初対面のあなたにとやかく言われても訳が分からないわ」

「…そうですか。失望しましたよ。赤坂先輩が可哀想ですねー。こんな女に未練タラタラだなんて」

　…私は掴みかかりたくなる衝動を抑えて、前に進む。

「…まあいいです、初対面の僕が出過ぎたことも言いましたね。さようなら、愚かなピエロ」

　………思わず足が止まってしまった。

「待ちなさい」

「おやー？どうかしましたか？初対面の人にその態度は感心出来ませんねー」

　…ほんとあなたには言われたくないわ…初対面の人に愚かなピエロなんて誰が言うもんですか。

「なぜ…知ってるの？」

「僕に分からないとでも思いましたかー？赤坂先輩は知らないでしょうけど」

「それで、私に何の用よ？」

「旧交を温め合う…そんな嫌な顔しないでくださいよー。冗談ですよー。どうせ学校であの時と同じようなことが起きてるんでしょう？そのことについてですよー」

　ほんと…川澄千歳…嫌なやつだ。何もかも見通されてるような薄気味悪さを感じる。

「ええ、そうよ。それで私は解決しようと動いてるの」

「今回は逃げずに立ち向かうんですかー」

「…別にあの時も逃げてるつもりはないわ」

　とは言ってみたけど、見方によっては逃げたと思われても仕方ないのかな…

「へぇー、あなたは自らを犠牲にしたことで赤坂先輩が守られたとか思ってるようですが、見当違いもいいところですねー」

「どう言うことかしら…？」

「それくらい自分で考えてくださいよー。学年1の天才なんでしょう？」

　見当違いってどう言うこと？実際に航平君を守ったんじゃ？

「はぁ、本気で分からないって顔してますね。まあいいです。

「さしずめ連続盗難と言ったところですかねー。それをどう解決するつもりです？」

「ターゲットは航平君に罪を着せることでしょ。それならあえてこちらからわざと航平君に全ての罪を着せる。そして周りの反応を見る。あとは担任と連携して洗脳してる犯人を炙り出すつもりよ」

「ターゲットが赤坂先輩…？犯人を炙り出す？ふふっ…何を甘いこと言ってるんですかねぇ」

「甘い？どういう…」

「それくらい自分で考えてくださいよー。僕は僕のやり方でやらせていただきますからねー」

「ちょっと！？」

　そう言うと川澄千歳は去って行ってしまった。

(何を考えているの…？)

　あの子にやらせたら全てがめちゃくちゃになる。そういう予感がしながら私は翌日を待った。そしてそのせいで、航平君に連絡するという重要事項を忘れてしまっていたのだった。

　翌日。LHRでは私の思うように話しが進んだ。航平君が犯人扱いされ、教室が航平君を叩くムードに。

　そんな中、5人、驚きを顔に出していた。

　松田君、小山田君、斎藤さん、ののは、明石さん、この5人だ。

(この中で松田君と小山田君は除外ね…男だし…)

　残りは3人。斎藤さん、ののは、明石さん、だ。

　LHRが終わり担任が教室を出てしばらくすると松田君がやってきて、航平君のカバンから松田君の財布が出てきた。

　あ、航平君が席を立って出て行ってしまった。

(あ！航平君に昨日連絡するの忘れてた！)

　慌てて航平君を追いかけようとするが

「赤坂君、仲良かった松田のものまで盗るとはねぇ。最低だよ」

「うーん…」

　そう言ってきたのはののはだ。

「悪いことは言わないから、やめときなって。赤坂君のこと気になってるのは分かるけど、危ないよ」

「…」

「加藤さんの体操服を盗っていてもいなくても、他の物盗ってるって！松田以外の財布もさ！」

「…」

　ののはには返事せず、周りを見渡す。明石さんは1人で黙々と弁当を食べ、斎藤さんは、数人の男女と話しているみたいだ。そしてそのグループのギャルっぽい子が

「えー！赤坂って他のものも盗ってるの！？マジやばーい」

　この発言はたちまちクラス全体に広まり、ざわめきが広がった。

(…これで怪しいのはののはと斎藤さん、かな)

　結局、航平君に説明することは出来ず放課後を迎える。委員長の仕事を終わらせて職員室へ。

「失礼します」

「ん？吉崎？今日は来ないかと思ってたぞ」

　ん？なんで私が来ないことに？

「いや、なんかさっき川澄千歳とかいうやつが来て、吉崎の代理だとか言ってたな」

「え！？」

　いやいや！川澄千歳がなぜここに！？

「そ、それで彼女は？」

「さっきまで俺のクラス情報まとめてるファイル見てメモ取って帰ってったぞ」

　彼女は何を考えてる？

「よくわからんが、まあいい。それでLHRのことなんだけどな…」

「はい、犯人候補に3人上がりました」

　私は斎藤さん、ののは、明石さんの名前を伝えた。

「なるほどな…俺の方も3人を調べてみるよ。それでな、吉崎、赤坂に連絡してないだろ」

「は、はい。ゴタゴタしてたら忘れてしまって…」

「はぁ…まあいい。ちゃんと連絡しとけよ」

「はい！」

明日航平君の家にでも言ってしっかり説明しよう。