第9話 翔べチ○コ



   【水希ver】



 さっきから僕をつけてくる黒服二人、どうしてやろうかな?どう見たってプロっぽくないし、撒こうとおもえば撒けると思うけど。


「直接聞くのも有りだよね?何の用か」


「言いますかね?拷問でもしちゃいます?それか色仕掛けか」

 ポコさん(仮)が、胸の谷間から顔出して言う。


「その発想が怖いよ、どっちもヤダだし。ポコさん(仮)、なんか武器になったりできんの?」


「せいぜいムチくらいですかね?でも打ったらコッチも痛いし、男相手じゃ嫌ですねー。女性が相手ならむしろご褒美ですけど」

 

 って、胸の谷間で腕組みなんかしながら

言ってるけどさ、このチ○コ、だんだん変態度上げてくるよね。


 とりあえず、ちょっと早足にしてみた。むこうの黒服に黒サングラスの二人組は、片方が角刈りのぽっちゃり、もう片方が痩せたノッポってゆー、絵に描いたよーな凸凹コンビだったりするんだけど、しっかり追ってくる。


 人がまばらな商店街に入ったから、狭い脇道は幾らでもあるんだよね。僕はその内の一本、自転車置き場になってる路地に入った。ざっと100台近くの自転車が乱雑に並んでる。はみで出てる自転車も多いから、注意して歩かないと、すぐひっかかりそうになるんだよね。僕はそこを軽快に抜けていく。

 と、後ろでなにかガシャガシャと引っ掛かるよーな音がしたかと思ったら、ガッシャーンとひときわ大きい音がして、自転車がドミノ倒しのように豪快に倒れていく。案の定、ぽっちゃりの方が身体を自転車に引っ掛けたみたいだ。


 後ろを振り返ったら、二人が倒れそうな自転車を慌てて止めようとしてた。けど、ドミノ状に倒れてくる自転車を支える力とスピードはなかったみたい。結局、その自転車置き場に止めてあった自転車は見事に全部倒れてしまった。

 それ見て唖然としてる二人。立ち止まってチラ見してる僕。


「計算通りってとこですかね。さあ、この間に逃げましょう。えっ?なんで戻るんです?」


 僕は二人の方に歩いていく。だってあの二人、律儀に自転車起こそうとしてるんだもん。意外といい人達なんだよね。


「ほっとけないよ。手伝わないと」


「いいんですか?付け回されたんですよ?」


「たぶんいい人達なんだよ、あの二人」


 胸元見たら、¯\_(´Д`)_/¯←こんなポーズされちゃったよ、チ○コに。人間の尊厳ってなんだろう。


「おじさん、手伝うよ」

 そう二人に声掛けたら、なんかギョッとされちゃった。何秒か固まった後、

「いいのかい、お嬢ちゃん?」

 ってノッポの方が言う。

「これだけあったら二人じゃ大変でしょ?」

 ニコッと笑顔見せたら、二人とも明らかにキョドりながら、

「頼むよ」って視線そらしながら言ってきた。

 ん?なんか二人とも赤くなってない?

  

「これ、端からちゃんと起こしていかないとダメだね。オジサン、そっち持ってて」


「お、おう」

 オジサン達、イマイチ要領よくないから僕が仕切らないとダメみたい。

 倒れた自転車は、車輪に別の自転車のハンドルが挟まってたりして、外すだけでも大変だよ。


「あっ、そこそんなに詰めたらダメじゃん。出せなくなるでしょ?ちゃんと間開けていかないと」


「す、すまん」

 割と素直に言う事聞くんだよね。

 二人に指示出しながら、自転車起こして、綺麗に並べてたら結構時間かかっちゃった。20分くらいかなぁ?


「ふー、綺麗になったね」 


「ありがとう助かったよ。服やら汚しちゃって悪かったな」

 と、角刈りの方が言う。


「これ体操着だから問題ないよ。オジサン達こそ汚れたでしょ?」


「ああ、どうせ黒いから目立たないよ」  

 そう言ったノッポが角刈りと顔を見合わせて笑った。


「嬢ちゃん、優しいんだな。関係ないのに手伝ってくれて」


「いや、僕がここに誘い込んだもん。関係なくはないよ」


 そう言うと、ノッポがヒョイと肩をすくめた。


「やっぱり気付いてたかい?」


 この人等、アレで気付いてないと思ってたのかな?


「あれだけ下手だとね」


 二人でまた暫く顔見合わせてから、ノッポが言う。

「怖がらせて悪かったな。実はある人からお嬢ちゃんの事を調べてくれって依頼されたんだ」


 うん、別に怖くなかったけどね。逆にわくわくしたし。


「それ言っちゃっていいの?」


「どうせバレたしな。誰かってのは、悪いけど内緒な」


 ふうん、誰だろ?心当たりないなぁ。


「それで、もし良かったらだけど、お嬢ちゃんの事、幾つか教えてくれないか?」


 うん、初めからそうしたら良かったのに。


「まぁ、少しならいいよ」

 って言うと、二人の顔がパッと輝いた。


「ありがたい、助かるよ。じゃ、名前から教えてくれる?」


 ん?何かポコさん(仮)がお腹叩いてるな。

「ちょっとごめん」

 僕は後ろ向いて、ポコさん(仮)にささやいた。


『なに、ポコさん(仮)?』


『本名言っちゃまずいですよ?』


 流石に僕もそれぐらいわかってるよ。でも、咄嗟に偽名って思い付かないなぁ。


『わかってるけど、じゃ、何がいい?』


『任せて下さい。こういう事もあろうかと、考えてました。(ゆづき)とかどうです?』


『へぇ、悪くないじゃん?それで行こう』

 意外と気がつくチ○コだね。


 僕は二人に向き直った。


「あ、ごめんね。名前?上城ゆづきです」


 やっぱり、葉月ねえちゃんの親戚設定でいいよね?


「ふむ、いい名前だね。漢字はどう書くの?」

 ノッポがメモ帳出しながら尋ねてくる。


『漢字?』

 僕が戸惑ってると


     『優しいに月です』

と、ポコさん(仮)がこっそり教えてくれた。


「えっと、上にお城の城、優しいに月、です」


「年齢、血液型、星座もいい?」

 

「14歳、B型、水瓶座です」

 これは水希のまんま。


「学校は?」


「ごめんなさい、話せるの、これぐらいです」


 そう言うと、ノッポはすぐ手帳を閉じた。それ以上は聞かないよって事みたい。


「ありがとう、充分だよ」

 そう言って笑顔を見せる二人。


「じゃ、僕行くね?」

 

「ああ、気をつけて」

「ありがとうな」

 


 ある程度離れて後ろ振り返ったら、まだ手を振ってるよ、あの二人。あんな格好してるくせに、つくづく人がいいんだなぁ。


「でも、一体何だったんだろ?」


「誰か力のある人物が後ろで糸引いてるんでしょうね。たまに糸引くワタシが言うんだから間違いないです」


 後半思いっきり余計だよ。相変わらずおっぱいの谷間から顔出してるけどさ?










  【カスミver】




 どうも、カスミです。

 コンビニでモモ姉さんへの献上品をいろいろ買い込んで、モモ姉さんのお部屋へ向かう途中です。そうそうコンビニといえば私、天使に遭遇してしまいました。あ、ホントに頭に輪っかとか背中に羽根とかはなかったですよ。あったら逆に怖いです。天使というのは比喩です。何故か彼女の周りだけ光量が違うんです。オーラってホントにあるんですね。私、あんなオーラを垂れ流してる人、初めて見ました。その赤いジャージの天使と私、同時にレジに並んだんですけど、迷わず先に行ってもらいました。ちょっとでも長く見ていたかったから、ってのは内緒です。後ろからうなじの辺りをガン見したのも内緒です。

とても目の保養になりました、ありがとうございます。


 さて、そんなささやかな幸せな気分も、この後の事を考えると少し憂鬱です。モモ姉さん、おっぱいが喋り出したとか言ってたけど、なにかいけないハーブとかに手を出したんでしょうか?あの人なら充分あり得るので怖いです。

 あの人、正義のヒーローやってなかったら、夜のお仕事に就いていたんじゃないかと思います。それこそピンクなお仕事に。あ、ごめんなさい、上手いこと言ったとか思ってないですから。

 


 ♢


「カスミです」

 とても古いアパートの2階の端がモモ姉さんのお部屋です。インターホンを押すと、中でドタバタしてる音が聞こえて来ました。


「おー、いらっしゃい。入って」

 ドアを開けたモモ姉さんはダボダボのTシャツに下はパンツいっちょのあられもない格好です。この人、宅急便のお兄さんにもこんな姿を晒すんでしょうか?それに入れと言われても、床が見当たりません。たぶん、ゴミの下に埋もれているのでしょう。


「モモ姉さん」


「ん?なに?入んないの?」


「私、前に来たの一週間前ですよね?」


「そーだったっけ?」


「なんで一週間でこんなに部屋が埋もれるんです?」


「さあ?不思議だよねwww」


 この人、ゴミを増やす悪魔の実でも食べたんでしょうか?とにかく、こんな部屋にはとても居られません。


「掃除しますから、ベランダにでも出てて下さい」

 そう言いつつ、私はもう臨戦態勢です。スカートじゃなくてデニムパンツで来て正解でした。


「ほらほらそこ、下着姿で出ないで下さい」

 あんな姿、近所の男子学生が見たらどうなる事でしょう?この辺の性犯罪率が急上昇するんじゃないでしょうか?




 ◇



「お〜片付いたね〜」

 

「片付けたんですっ」


 1時間程かかって、部屋はだいたい綺麗になりました。床もちゃんとあったんですね。当たり前ですが。これでやっと落ち着けます。


「おつかれ。乾杯しよーよ」

 モモ姉さんが早速ちゃぶ台の上にお酒やら、おつまみやらを広げます。


「何に乾杯ですか?」


「う〜ん、おっぱいかな」


「すっごいリアクションしにくいです」


 そう言いえば、喋るおっぱいの話はどうなったんでしょうか?私からは怖くてとても聞けません。とりあえず、私も缶ビールを頂きます。


「ううっ、キンキンですね」

 お掃除の後の1杯はやはり美味しいです。


「ん?あれ?」

 と、モモ姉さんがしきりに首を捻ってます。どうしたんでしょうか?


「あっそーか。ビールがなんか美味くないと思ったら、アイツ寝てんのかな?」


「アイツ?誰です?」


 私がそう聞いてる間に、モモ姉さんはいきなりTシャツを脱ぎだしました。


「な、なにしてるんです⁉」


 モモ姉さん、ブラ付けてないです。当然、おっぱいがポロリと出てきました。パンツいっちょであぐらかいて、おっぱい丸だしの彼女は、なにを思ったのか、おっぱいをモミモミし始めました。

 私、唖然と見てるだけで、完全に突っ込むタイミングを逃してしまいました。半裸のエロいお姉さんが目の前でおっぱい揉んでるシーンって、人によってはご褒美かも知れませんが、あいにく私はそんな趣味ないです。


「おーい、ビーチ君出てきな?」

 

 モモ姉さん、今度はおっぱいもみながら話しかけ始めました。私、何か見てはいけないものを見てるんでしょうか? 

 そしてビーチクンとは何なのでしようか?


「お、出てきた?」

 

 いったい何が出てきたのでしょう?はっきり言って怖いです。

 すると姉さんは私の目の前におっぱいを突き出してきました。なんでしょう?揉んだらいいんでしょうか?それとも舐めたらいいんでしょうか?いやいや、何考えてんだ私。


「見てみ?」姉さんはそう言って右のおっぱいを持ち上げて見せてきます。


「はあ」


「どう?」


 何が、どう?なんでしょうか?よくわかりません。


「チクビ黒いですね」


「はあ?黒いわきゃないだろっ!ってか色とかどうでもいいわ」


 この人はいったい何を見せたいんでしょうか?

 って、あれ?今なんか……


「黒い先っちょが動いたよーな?」


「いちいち黒いってつけんなよっ」


『うむ、我輩はちょっと黒いおっぱいである』


「えーっ⁉今、おっぱい喋りましたよ⁉」

 確かに黒いチクビがモゴモゴ動いて声が聞こえました。


「お前も黒いって言うんじゃないよ!」


『いでででででででででっ』


 モモ姉さんが自分のチクビをつまみあげて、そのチクビが悲鳴を上げてます。なんてシュールな光景でしょうか。


 私いま、何を見せられてるんでしょうか?















 






 

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