第4話 タマツー脱出作戦

 

「いい?絶対学校で抜いちゃダメだからね?」

 

 もう、朝からねえちゃんがこれ言うの何度目だろ?いい加減、耳でタコ焼き焼けそーなんだけど。なんか、昨日からやたらねえちゃんが構ってくるんだよね。女の子になったからかなぁ?


 そー言えば今朝起きた時だって僕とねえちゃん、夜中にツイスターでもやったの?ってくらい、複雑に絡まってたもんね。お互いパジャマもめくれ上がってたしさ。相当、寝相悪いよね?


 そんなに妹が欲しかったのかなぁ?

 弟の時は放ったらかしだったのにね。

 あんまり構って来られても困るんだけどさ、まぁさっきまた男に戻ったからいいかな。


 朝、ポコさん(仮)が縮みまくってたのは驚いたけどww

 充電切れたら、あんな小指ほどになっちゃうんだね~。あわてて股に差したら、本当に元のチ○コに戻っちゃったし。

 どうせ今から学校だから、僕も男に戻れてちょうどいいんだけどね。


「行ってきまーす」

 そうねぇちゃんに声掛けたら、奥の方でなんか叫んでたけど、まぁいいか。





 僕の中学校までは、徒歩で20分くらいなんだよね。因みに、ねぇちゃんの通ってる高校とは隣同士だったり。



 通学路にあるコンビニの前を通ると、ちょっと変な人がいた。てかさ今時、金髪のモヒカンなんている?絶滅危惧種ってヤツだよね。そのモヒカンは、ヤンキー座りでアゴにマスクずらして、ガリ○リ君食べてた。朝からガリガ○君とか食うかね?

 って、思ってたらなんか目が合っちゃったよ。


「おい」ん?呼んでる?


「はい?」まあ、返事しとくかな。


「うぉっ、うるせー。お前、ちょっ、来い」


 返事してうるせーってなんだよ。うーん、頭悪そーなモヒカンに呼ばれちゃったよ。めんどくさいなぁ、逃げよっかな?試しに半歩下がってみよ。


「ぅおい、ナニ下がってんだオマエ」

 って威嚇してくるわりに、立ち上がる気配もないんだよね。もう半歩下がってみよ。


「下んなよっ進んで来いよっ」

 

 一歩進んでみた。


「そーだよ、そのまま進んで……」


 二歩下がってみた。


「おま、ナニ進んで下がってんだよっ不幸せかよっ?」


 ごめん、ちょっと何言ってるかわかんない。つか、絶対ヤンキー座りで足痺れちゃってるよね?だから立てないんだよね?

 僕は取り敢えずヤンキーに近付いた。


「キタロー君、不幸せってナニよ?」と、僕はモヒカンに聞く。

 うん、実はこのモヒカン、知ってる人なんだよね。恥ずかしいからあんまり大きな声で言えないけど。


「ばっか、オメ、チーター知らねーのかよ?幸せは歩いて来ねーんだよ。だから歩いて行くんだよ。三歩進んで五歩下がるだよ?」


「知らないよ。ってか、それ永遠に不幸せじゃないの?」


 この絶滅危惧種の不良っぽいのはかなりバカなんだよね。見た目は不良っぽいだけだけど、頭の中身は正真正銘の不良品だったり。

 僕の一つ上の先輩で三年生なんだけど、なぜか葉月ねぇちゃんに弱み握られてるらしくて、僕の事をかわいがってくれてたりする。


 因みにフルネームは久里亀太郎くり かめたろうってゆーんだけど、皆はキタローって呼んでるんだよね。


「なんで朝からガリガ○君食べてんの?」


「ばっか、見てわかんねーのかよ?朝食に決まってんだろーが」


 いや、聞いてもわかんないよ。それ誰が見たら朝食って思うんだよ?

 そう、思ってたらキタロー君がガリ○リ君を僕の目の前に突き出してきた。


「ん、食ってみ?」


 ちょっとヤだけど、まだ舐めてなさそーなトコをガブッとかじる。

 頭がキーンとした後、口の中に何とも言えない匂いが広がった。


「うっ、ナニこれ?」


「ガリ○リ君なっとう味」


 げっ、ガ○ガリ君になっとう味なんかあったんた?どんだけ攻めてんだよ?あの会社。


「まさに糸引く味だわ、うん」


 いや、糸引いてないじゃん?つか引くのは後だよね?まあ、ドン引きはしたけどさ?


「どーよ?朝食に相応しいだろ?」


 だから食ってたのか。いやいや、ないない。たぶん、もう一生食べる事ないよ。


「じゃああと、ごはん味とかあれば完璧だね?」


「アホか、お前?朝からアイス2つも食うバカが何処にいんだよ?腹ユルユルになるだろーが?」


 知らねーよ、頭のユルい馬鹿ならここにいるよ。つかアイス食ってる自覚はあったんだ?



「ところでよ、葉月先輩は元気か?ん?」


 ガリガ○君なっとう味を完食したキタロー君が変な口調で聞いてきた。


「ねぇちゃん?元気だよ?」


「そうか、チキショー、羨ましいヤツだ、おまえ」


「ええ?なんでよ?つか、遅刻じゃん?急がないと」

 うわぉ、馬鹿の相手してたら、いつの間にか時間ぎりぎりだよ。


「おお、はよ行け」


 この人、サボる気だな?まあいいや。


「じゃ、またね」







 4時間目が終わってさあ昼休みって時、窓の外見てた大窪が声を上げた。


「なぁ水希、あれ久里先輩じゃね?」


「ん?」

 僕も窓から外見ると、校門でキタロー君が体育教師に襟首掴まれて、ズルズルと職員室の方へ引き摺られて行く所だった。 


「あー、キタロー君だわ」

 結局、今頃登校してきたのかぁ。どんだけサボってたんだよ?ああやって引き摺られて行くの、もう何回目だろ?


「お前、よくあんな怖い先輩と平気でつるんでるよな?」と、ちょいぽちゃの中八木が言う。

「そうそうあの人、絶対何人かコロしてるだろ?」そう言ったのは、ややイケメンの大窪だった。


「いやー、流石に殺ジンはしてないって」

 ってフォローしたけど、ホントどーなんだろ?周りに迷惑掛けてんのは間違いないけどね。


「それよか、早くパン買いに行かね?売り切れちゃうぞ?」

 太っちょ中八木にせかされ、僕ら売り場へ向かった。





「あれ、お前、いつの間に着替えたの?」


 イケメンの大窪が、コロッケパン食べてる僕に聞く。次は体育の授業だから、僕はすでにジャージに着替えてたんだよね。


「さっき教室に戻った時、パッと着替えた。ジャージの方が楽だし」


「くつろぎ過ぎだろ」

 って、中八木が言う。そういうお前は食い過ぎだけどね。ちゃっかり弁当も持って来てるのに、パンもどんだけ積み上げてんだよ?


「バカ、ご飯とパンは別腹なんだよ」


 いや、惣菜パンでそれ言う?






 

「さて、どうする?もう体育館行ってバスケでもすっか?」


 昼飯が終わった後、大窪がそう言った。


「あ、先行っててよ。僕、トイレ寄ってく」

 僕はそう言って、トイレに向かった。

 

 えーっと、男子トイレでいいよね?よく考えたら、男に戻ってからトイレ行くの初めてだよ。

 小便器の前でジャージとパンツをちょい下げてポコさん(仮)を出す。

 あ、今は普通のチ○コか。


「………」


 うーん、これこのまま出しちゃっていいのかなぁ?なんか、ポコさん(仮)に、すごーく悪い気がするんだけど。ってか、めちゃくちゃ出しにくいんだよね。


 暫く考えても、出そうになかった。したいのに出ない感じ。困ったなぁ。


 とりあえず、僕は個室の方に入った。座って頑張ってみるけど、やっぱり出ない。


 仕方ない。

 僕はジャージとパンツを下ろしたまま立ち上がり、チ○コを逆手で、侍が刀を抜くように持った。暫く持ってると、抜けそうな感じがビンビンしてくる。


 そして僕は勢いよく、チ○コを引き抜いた。


 ズルリと、下半身から何かが出て行く感覚があって、身体全体がカッと熱くなる。

 胸や腰回りが張っていくのを感じた。


「ふぅ」


 僕はガクンと便器に座り込んだ。そのまま出そうだったんで、下半身を緩める。

 今度は何の問題もなく出来た、ってか出た。よかったぁ。


 右手で持ってたチ○コがうねうね動きながら姿を変えてく。そしてすぐにお馴染みのポコさん(仮)の姿になった。


「あれ?水希君、こんちには。充電終わったんですね。で、ここどこです?」


「やあ、ポコさん(仮)こんちには」

 あ、この挨拶は間違いじゃないよ?僕とポコさん(仮)で決めた挨拶なんだ。ねえちゃんは絶対使わないって言ってたけどね。


「ここは学校のトイレだよ?オ○ッコしよーと思ったんだけど、気分的に出なくてさ、手っ取り早く抜いちゃったww」


 それ聞いたポコさん(仮)が、なんかため息ついてる。

「……学校で抜いちゃったんですか?葉月さんに止められてましたよね?」


「あ…」


 そーだった、一回抜いて女になったら、二時間空けないとまた男に戻れないんだっけ。

 うわぉ、やっちゃったよ。

 ポコさん(仮)も、なんかじと目で見てるし。


「ねぇ、すぐくっつかないかな?」


「無理ですよ。賢者タイム中です」


 うわぁ、取りつくチ○コもないよ。

 まぁ、ジャージに着替えてたのが不幸中のWi-Fiだね。胸とお尻回りはちょっときついけど、学生服よりは全然ましだもの。


「二時間、どこかでやり過ごすしかないですねぇ」


「そっかぁ、授業出れないなぁ。あ、そうだ、スマホで大窪に連絡して、早退しますって言っといてもらおーかな?」


「それがいいですね。で、スマホは?」


 僕は制服のポケットを探ろうとして気がついた。


「あー、ジャージに着替えてたんだっけ。スマホ、教室だよ?」

 この格好で取りにいかないとダメなのか。マッズイなぁ、誰かに見られたら絶対ドロボーと思われるよ。


「仕方ないですね。ワタシに任せて下さい。Wi-Fiを捉えます」


「えっ、ポコさん(仮)、生身でWi-Fiに接続できんの?」

 すっげー、なんてハイスペックなチ○コだよ?まさに不幸中のWi-Fiだよ。


「……あ、ここフリーWi-Fiじゃないからダメですね」


「……」

 なんだよ、スマホ以下じゃん?


 取り敢えずここにいたって仕方ないし、場所を移動する事にした。

 そーっと個室のドアを開ける。良かった、トイレの中には他に誰もいないや。鏡に自分が写ってた。髪も首が半分隠れるくらい伸びてるし、体形は完全に女の子のそれだった。何よりおっパイ目立つ目立つ。うーん、確かに男の僕と全然違うなぁ。これじゃ、誤魔化すの無理だよ。ポコさん(仮)はジャージの中に隠れたし、教室でも行ってみるかな。

 

 トイレから出ようとしたら、入口で何かとぶつかった。ぼょーんって感じの衝撃で尻もちついちゃった。見上げたらそこに肉の塊があった。


「あ、ごめ、え?女の子?」

 うわあ、よりによって中八木かよ。僕がなかなか来ないんで見にきたのかな?


「え?なんで女が……、大丈夫?」

 げげ、大窪もいるじゃん。めっちゃ覗き込んでくるし。

 二人にガン見されてるよぉ。


 大窪がなんかカッコつけて手を差し伸べてきたけど、それはスルーして慌てて立ち上がった。


「あ、大丈夫だから。ゴメンね」

 思わずそう言っちゃったけど、声もだいぶ変わってるから、僕だってバレてないよね?


 なんか顔が真っ赤になってる二人の横をすり抜けて駆け出したら、大窪に呼び止められた。


「あっ、あの、君の名は?」

 

「白身ですっ」

 いや、アイツも僕も何言ってんだよ。ダメじゃん?


「あ、ちょっと待って」 

 その大窪の言葉はスルーして、僕は全力で走り出した。



「なるほど、黄身と白身を掛けたんですね?」

 ポコさん(仮)が、僕の胸の谷間からひょこっと顔を出して呟いた。いや、頼むからボケの解説しないでよ、恥ずかしい。ってかそんなトコにいたの?こーゆーの、なんかの映画で見たよね。って、胸の谷のチ○コか?


「あら、さっきの二人、なんか追っかけてきますよ?」

 ポコさん(仮)が後ろを覗き込みながら言う。


「えぇ、なんで⁉」

 一瞬振り返ったら、ホントに二人追い掛けてきてるよぉ。


「なんか目がハートになってますねぇ。惚れられちゃったんじゃないですかね?」

 はぁ?わけわかんないよ。よりによってアイツらだしさ。それなりに友達付き合い長いんだよ?なのに惚れられて、掘られちゃうの?

 あっ、僕今、女だったっけ。


「水希くん、自分じゃわかんないでしょうけど、君めっちゃフェロモン出してますよ?」

 

「ええ⁉そーなの?」

 そんな事言われてもなあ。取り敢えず、アイツら撒くのが先だな。幸い、僕の方がかなり足早いみたいだし。


「って、胸の揺れ、パねぇ〜こんなに走りにくいもんなの?」

 めっちゃ上下左右に揺れるよぉ。


「ご心配なく。ワタシ、支えてますから」

 そう言うとポコさん(仮)は再び胸の谷に潜って見えなくなる。あ、なんか下から支えられてる感じ。どうやらそーゆー形状に変態したみたい。

「ありがと、ポコさん(仮)」


「いえいえ、役得ですから」


 それ、どーゆー意味だよ?



 


 結局、階段かけ上がって屋上の入口まできちゃったよ。屋上は基本、人いないからね。

とりあえず、ここで時間潰すかな。屋上に出るドアを開け、さぁ、と一歩踏み出したら、何か踏んづけた。

 はぁ?どこのバカだよ?こんなドア開けてすぐの所で寝てんの?

 僕の身体は見事に体勢崩して、寝てる誰かに覆い被さるように倒れ込んだ。


「むぎゃっ」


 僕の下敷きになった誰かが、潰れたカエルのような声を上げた。

 うわお、咄嗟に手をついたから顔と顔がギリギリで止まった。あっぶねーっ。危うくキスしちゃうとこだったよ。


「うーん?」


 下敷き男がむにゃむにゃ言いながら、目を開けた。超至近距離で目と目が合っちゃった。


「……」


「……」


 うーん、なんでこの人、ここにいるんだろ?


 と、思ってたらソイツがいきなり覚醒した。


「うおおおおお、親方ーっ!天使が空から落ちてきたーっ!!」

 

 なんの夢見てたんだよ?


 この金髪モヒカン。





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