5.シースは、わたしのたった一人の妹!



 サンゼでございます。

 ご無沙汰しておりましたわ。


 うう、お姫さまとかお嬢さまが使う言葉って、なんだか、恥ずかしくてムズムズする……

 スウィンお姉ちゃんに、お姫さまのしゃべり方を教えてってきいたら、買ってもらった物語を見せてくれたよ。

 お姉ちゃんも、あんまりわからないから、ごめんねって。

 スウィンお姉ちゃんがしばらく体の具合が悪くて、シースと一緒に毎日のお料理を頑張るようにしてたら、これを書く時間がなくなっちゃって、スウィンお姉ちゃんがご褒美にお姫さまと王子さまの物語を読んでくれたんだよ。

 スウィンお姉ちゃんはいつもは元気だけど、たまにしんどそうなときがあるの。

 そういうときは女の子は無理をしちゃダメって、エヴァンスも他の大きいお兄ちゃんも優しいんだよ。

 だからたまにスウィンお姉ちゃんは“お姉ちゃん”をお休みするの。

 だからわたしたちが代わりに頑張るんだよ!

 あっ、そうそう、今日はね、だからね、シースのことを書くの!


 シースは、わたしよりひとつ下に生まれた女の子、九歳になったよ。

 村でシースより年下の女の子はいなかったから、わたしと一緒にシースはみんなに可愛がってもらったよ。

 村でもわたしのうちの近くの子だったから、一番仲がいいの!

 シースはね、おとなしくてね、あんまりしゃべらなくて、いまの学校の男の子から、からかわれることがあるから、わたしがかばってあげるの!

 わたしの大事な妹なんだから!

 リーヴほどじゃないけど、他のみんなよりも少し濃い肌の色で、髪の色はちょっとキラキラしてる茶色。

 それに、朝起きたら必ず丁寧に櫛でといてあげないといけない癖っ毛!

 あんまり長いと、寝癖がボワボワッと毛玉みたいになっちゃうから、肩くらいで揃えてて、櫛でといてあげたら上半分だけまとめてしばってあげるんだ。

 スウィンお姉ちゃんがやってあげることが多いけど、最近はわたしもやってあげるんだ、お姉ちゃんだもん!

 シースの瞳は、濃い青の色。

 わたしの好きな色。

 晴れた空の色なの。

 きれいだよね。

 だから、シースがうらやましいなって思うけど、前に言葉に出しちゃったら、セリュフに頭をがしがし撫で回されて、髪の毛をグッシャグシャにされたから、もう絶対に言わないから!


 シースは他の子とちょっと違うって、みんなが言うけど、ほとんどしゃべらないのも、ぼうっと外を眺めてることが多いのも、それはシースの“個性”なんだよ。

 うん、セリュフがそう言ってたから、わたしもシースが誰かに「他の子と違う」って言われたら、“個性”なんだよって言い返すんだ。

「魔法の適性があるかもな」ってセリュフがつぶやいてたけど、シースは魔女になるの⁉︎ ってきいたら、ちょっと違うかなーって言われた。

 どう違うの?

「“魔女”って響きは悪いことをしそうだろ? 正式には“魔法士”っていうんだ。魔法を使って戦う人のことさ。“物語の中の魔女”は、現実にはいない。でもシースは魔法士になれたら意外と恐い女になるかもな。人間の男を翻弄する小悪魔な魔女っ子か」

 セリュフがニヤッと笑ってるのを、ヴィイが呆れたような眼で見てた。

 なんか変に笑ってるセリュフから離れて、わたしも抱っこしてくれた。

 ヴィイの背はおっきくて、抱き上げられると自分もおっきくなった気になるから、大好き!

 セリュフは、たまにからかってくるから、たまに嫌い。

 でも、いっぱい可愛がってくれるから、大きな声では言わないけど、セリュフも大好きだからね。

 シースもね、あんまり態度には出ないけど、嬉しいときには黙ってその人にそっと抱きつくから、ちゃんと好きって心が言ってるんだよ。

 わたしにはわかってるんだから!


 わたしも、魔法が使えるようになるかなあ。

 みんなの役に立ちたいよ。

 お料理も頑張るし、大きいお兄ちゃんのお仕事をなにか手伝ってあげられないかなって思ってる。

 でも、「学校にちゃんと行ってろ」って、大きいお兄ちゃんたちみんなが言うから、昼間はお勉強を頑張るの。

 本当は、スウィンお姉ちゃんみたいに、みんなのお世話をできるようになりたい。

 だから、お勉強をもっと頑張る。

 みんなが困ったときに、助けてあげられるように。

 みんなが食べるものを美味しく作って、着るものとか必要なのものも用意して、お掃除もちゃんとやって、そういうことは全部が大事なことなんだって、スウィンお姉ちゃんから教えてもらったんだ。

 わたしも、みんなを、わたしの力で守るの。

 未来のシースみたいに魔法が使えなくっても、大きいお兄ちゃんたちみたいな戦士じゃなくっても、わたしがみんなの生活を守るからね!


 きゃあ!

 シースがわたしをぎゅうって抱きしめてくれた!



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