アンドロイド

うたた寝をしちゃったのかな。

僕は食卓で目が覚めた。

そうだ、仕事に行かなくちゃ。

僕は壁掛け時計を見る。

もう10時じゃないか。

僕は慌てて、壁に引っ掛けてある、

キャンバス地の鞄を肩にかける。

「何慌ててるの」

スウェットの女が僕を見ていた。

「今日は日曜日」

「えっ」

そうなのか。

でも、僕には昨日の記憶がないぞ。

正確には、ローザが鞄を僕の肩にかけてくれた後の記憶だけれど。

「ねえ、昨日僕はここにいた」

「何言ってるの」

そう、僕は何を言ってるのか。

「ねえ、ローザはどこに行ったの」

「そのへんにいるんじゃない」

「あのアンドロイドのメイドでしょ」

「アンドロイド」

「そうよ」

「まあ、あなたは子供のころからお世話になっているから」

「家族みたいなものでしょうけど」

「でもいいよね。年を取らないって」

「ところで、君は誰なんだ」

女は僕に近づいてきて、

僕の顔を覗き込む。

「あなた、自分のパートナー忘れちゃったの」

「まあ、最近あなたちょっとおかしいから、いいんだけど」

「パートナーだって」

「そう、あたしはあなたの嫁」

「今はそんな言い方しないけど」

女は、僕の唇に軽くキスをする。

懐かしいにおいがした。

「ねえ、今日は出かけるの」

「さあ」どうなんだろう。

「朝食は外で食べようよ」

「今から着替えるから、待ってて」

女は、部屋を出て行く。

肩から掛けた鞄が、やけに重く感じられる。

僕は鞄の中を見た。

不思議な形の茶色い革のケースが見える。

僕はそれを取り出して、テーブルに置いた。

「それカメラなんでしょう」

「持って行こうよ」

うすいグリーンのワンピースを着た女が、

革のケースを持ち上げる。

「重いね」

女が僕を見て微笑んだ。

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