マニュアル

「いたずらが過ぎますね」

ローザが僕に言う。

「よく言い聞かせないと」

休みの日は遅い朝食になる。

メニューはパンケーキかワッフル。

それに、フルーツが添えられる。

今日はパンケーキにバターとメイプルシロップが

たっぷりとかかっている。

フルーツはバナナとキウイ。

そしてフレッシュなブルーベリー。

盛りだくさんだ。

「ホイップクリームは」

「カロリーが高いので、今日は遠慮してください」

ローザが僕を見てにこやかに笑う。

「ローザはいつからこの家にいるの」

「いつからでしょう」

「僕が物心ついた時にはいたからね」

「そうですね」

「ローザは、僕の両親のことは知ってるの」

「もちろんです」

「そうか、僕はほとんど覚えていないんだ」

「そうそう、カメラ見つかりましたよ」

「銀塩カメラ」

「一眼レフではないのですが」

ローザは手のひらぐらいのサイズの、

小さな機械を僕の前に置いた。

「一眼レフって」

「もっと大きいカメラです」

「これは、電池式なので、いつ動かなくなるかわかりません」

「一眼レフはマニュアルなのでその心配はないのですが」

「マニュアルって」

「手動のことです」

僕はカメラを手に取って、眺めている。

突然カメラの全面が開いて、突起物が顔を出す。

「何してるのよ」

驚いて前を見ると、女が僕を見ている。

「そこは触っちゃだめだと思う」

「取れちゃったよ」

「すぐに戻して」

「レンズを外しちゃだめですね」

ジェームスが微笑みながら僕を見ている。

「今日は素敵な方と一緒ですね」

「紹介していただけますか」

「レインです」

「パートナーですか」

「はい」

「ご一緒しても」

女が僕を見る。

「もちろん」

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