Sanctus 7

 思った以上に、群のドラゴン達は大きかった。小さいものでも竜段レベル3、大きなものは竜段レベル6だろうというものまでいる。

「これは……」

 そして、フミコとエレナを困惑させたのは、ほとんどのドラゴンが、自分たちと同じように武器を手にしていたことだった。

「全員、『V』だったというの……?」

 フミコの薙刀を握る手が震えた。

 醜い。

 狩るべき敵と同じ姿になってしまったかつての同胞に対して、フミコは単純な思いを浮かべた。

「あ……」

 エレナは驚きを含めた強い感情によって、自らの鎚矛メイスを落としてしまった。

 鎚矛メイスはすぐに見えなくなって、直後にエレナの対竜装フォースに長く立派な尾が生えた。

「エレナ?」

「オリ……ガ……」

 彼女の視線の先をたどると、竜段レベル6はあるであろう、がっしりした躯のドラゴンが、同じく巨大な大鎌サイスを持ってこちらに近づいているのが見えた。持っている得物とその真紅の鱗は、間違いなくオリガだったことの証拠であった。

 ドラゴンの群は、第二部隊と第三部隊を遠巻きに取り囲んでいる。本来あったはずの「V」としての意識は、もうなくなってしまっているようだ。

「エレナ、囲まれてるわ! 上下にすり抜けて突破するしかない!」

 呆然とするエレナに、フミコは呼びかけるが、彼女の焦点は依然として定まらない。

「エレナ!」

 フミコは薙刀の柄でエレナを打つ。

 エレナはふっ、と我に返ってフミコを見る。

「しっかりしなさい! 『零式』を討てなくなるわよ!」

「……ごめん、フミコ。——第三部隊、正面突破! オリガ——あの赤いドラコンへ集中!」

 対竜装フォースの尾から鎚矛メイスを引き抜き、エレナは前進する。

「エレナ」

 フミコの冷たく乾いた声は、彼女が本当に怒っていることを示している。エレナはそれをよく知っていた。

「ごめんなさい。……でも、これはあたしが介錯しなくちゃ」

「……もう知らない。好きにすればいいわ」

 即座にスピードを上げてオリガだったドラゴンに向かっていく第三部隊をよそに、フミコは溜息をついた。

 その間にもドラゴン達は、まるで人だった頃のようにその囲いを狭めてきている。

「第二部隊、敵の隙を見て散開。第三部隊が追いつめられないように、戦力を削って」

 フミコはそう指示をすると、自分は下に降り、群がってくるドラゴンの首を鮮やかに切り落とした。

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