エピローグ

 ――着物姿の女性は、もういない。


 何をするでもなく佇む姿は蜃気楼の様に、いつ頃からだったかを思い出せないくらい静かに風景の中へ溶けていった。

 袂から真ん中辺りまで進む。

 エンジン音は夜に響き、ヘッドライトは何も照さず。

 当然人影は現れず。

 手首の飾りは記憶の中に。

 光は歩道をすり抜ける。

 通り過ぎた後。

 橋を渡り切った先にある十字路を左へ曲がる車に揺られながら、思う。

 家に帰ってから、私は思い返すのだろう。

 部屋で一人。再確認をする様に。


『今日はあの橋に、幽霊はいなかった』


 ――と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

探し物語【橋姫】 口一 二三四 @xP__Px

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ