第27話

 カルロ森に修行に行っている、爺さんの元に向かう。


 女の子は俺を呼び止めた。


「私ならビリー様の居場所がわかる! 私もビリー様に用があるから一緒に行くわ!」


 カルロ森のどこにいるのかわからないし、一緒に行った方がいいよな。


「わかった、爺さんの居場所がわかるなら、道案内を頼む」


 俺と女の子はカルロ森に向かった。


 カルロ森はグロータル街の南西辺りの森のようだ。


 カルロ森は俺のいたジュラルの森と似ていて、魔物化した様々な生き物が出現する。


 それで、グロータル街の住人はあまり、近づかないらしい。


 女の子の案内でカルロ森に入ると、魔物化した虫や蛇と遭遇した。


 しかし、魔物化した虫や蛇は襲いかかってこない。


 俺は気になったので女の子に聞いてみる。


「なぜ、魔物化した虫と蛇は襲いかかってこないんだ?」


「私の[光]属性の魔法で、私達の姿が見えないようにしているの」


 そんな便利な魔法があったのか。


「君は武闘家なのに、魔法を使えるのか?」


 女の子は深刻そうな顔で言った。


「魔法が使えても、魔力が極端に少ないの……」


 そうだったのか。まぁ、魔力が充分にあれば武闘家にはなっていないよな。


「それと、私の名前はマリアル・ウェンディよ! これからはウェンディって呼んで欲しいわ!」


 そういや、名前を聞いていなかった。


「わかった……俺はエリタルテ・テリーという。俺のこともテリーと呼んでくれ。」


 ウェンディは笑顔で頷いた。


 カルロ森に入ってから二十分程、歩いた。


「そろそろ、ビリー様の修行場所に着くわよ!」


 ようやくか! ようやく爺さんに会えるのか!


 すると、小さな小屋が見えた。


 小屋の外にはサンドバッグや修行で使う道具が置いてある。


 俺は爺さんに会えるのが嬉しくて小屋まで走り、扉を開けて爺さんを呼んだ。




 しかし、小屋の中には爺さんはいなかった。


「ウェンディ、爺さんがいないぞ!」


 ウェンディは驚いて小屋の中に入った。


「そんな……修行の時ならいつもこの小屋にいるはずなのに」


 俺も小屋に入って扉を閉めようとした時、背後から何かが近づいてくる気配を感じた。


 気配的に動物でも虫でもない……人間の気配だ。


 後ろに振り向いた瞬間、黒い道着を着た武闘家が飛び膝蹴りをしてくる。


 咄嗟にガードをし、足を掴んで外に振り投げた。


 武闘家は一回転して綺麗に着地する。


「いきなり、跳び膝蹴りとは危ねぇじゃねぇか!」


 武闘家は不気味に笑い、顔を見せた。


「大きくなったな! テリー……」


 この声は……。


「じ……爺さんじゃないか!」


 黒い道着の武闘家は俺の探していた爺さんだった。


「わしの跳び膝蹴りをガードして、反撃をしてくるとは……強くなったのぉ」


「あぁ! 爺さんと別れた後もひたすら修行を積んだからな!」


 すると、小屋の中からウェンディが飛び出てきた。


「な、何が起きたの!? テリー、無事なの!?」


 ウェンディはかなり驚いた様子で言った。


「って、ビリー様だったの!? 驚かさないでください!」


「はっはっは! すまないのぉ、テリーを見つけたから驚かせてやろうと思ってのぉ」


 ウェンディは口を膨らませる。


「もぉ……毎回、こうなんだから!」


「話したいことが山ほどある……とりあえず、小屋に入ろうじゃないか!」


 俺とウェンディと爺さんは小屋に入った。

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