第26話

 グロータル街の中心部には大きな武闘家の銅像が建っている。


 中心部には着いたが、爺さんの居場所の情報は一向に入手できなかった。


 だが、爺さんについての大きな情報が手に入った。


 どうやら、爺さんはグロータル街の領主のようだ。


 冒険者として伝説を作り、街まで作るなんて流石は俺の師匠。


 そんなことを言っている場合じゃない……とにかく、爺さんを探そう。


 領主ってことは大きい建物に居るはずだ。街の大きい建物を端から端まで伺おう。


 グロータル街の総人口は少ないので、建物自体は少ない。


 大きい建物を全て伺ったが、爺さんには会えなかった。


 爺さんが領主だという情報以外、爺さんの情報はない。


 爺さん、一体どこにいるんだ。


 ようやく、グロータル街に辿り着いたのに会えなかったら来た意味がないじゃないか。


 半分諦めながら街の中心部にある、武闘家の銅像の下に戻ってきた。


 銅像の周りを一周し、銅像に彫刻が入っているのを見つけた。


 マーシャル・ビリーという名前が彫られている。


 本当は爺さんって凄い人だったんだな。


 俺とは三年間しか一緒じゃなかったし、俺の事を覚えているのだろうか。


 爺さんに会って、修行を続けて強くなった俺を見せたかった。爺さんともう一度、組み手をして勝ちたかった。


 ここまで来たけど、もう会えないんだな。


 銅像の下で、特に何もせずに突っ立っていた。


 どうせ、住人に聞いても同じ事しか言われないし聞いても無駄だ。


 何もせずに突っ立っている俺に、一人の女の子が声をかけてきた。


「あの……さっきはありがとう」


 声をかけてきたのは先程、複数の男達に襲われていた女の子だった。


「この街の住人だったのか……」


「こんな所で何をしているの?」


 俺はダメ元だけど、爺さんについて聞いてみることにした。


「爺さん……マーシャル・ビリーを探しているんだが、全く情報が集まらないんだ」


 女の子は当たり前のことを言うかのように言った。


「ビリー様は、普段はこの街にはいないわよ」


 領主なのに街にはいないだと?


「なぜだ? 領主じゃないのか?」


「ビリー様は領主よ! でも今はグロータル街の近くにある、カルロ森で修行を行っているの」


 顔には出していないが笑いがこみ上げてきた。爺さんは俺と修行をしていた時もそうだった。


 俺が修行で分からないことがあって、爺さんに聞こうとしたら、爺さんは一人で夢中になって自分の修行をしていた。


「そうだったのか! どおりで探してもいないわけだ!」


「教えてくれてありがとう! 今からカルロ森に行ってくるよ!」


 銅像の下に置いた荷物を取り、カルロ森に向かおうとした。


 でも、なんで女の子は爺さんが修行の為にカルロ森に行っていることを知っているんだ?


 一般の住人が領主の動きを把握するのは簡単ではないはず。


 まぁ、いいや! 

 爺さんのことを教えてくれたし、きっといい人だ。


 とにかく、カルロ森に向かうとするか!

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