第28話

 一つ気になった点がある。


「爺さんとウェンディはどういう関係なんだ?」


「ウェンディはわしの弟子じゃよ」


「テリーと別れた後にグロータル街に帰る道中で弟子にしてくれと頼まれてのぉ」


 ウェンディも続けて言った。


「そうよ! 最初は魔法使いだったんだけど、ビリー様と出会ってから武闘家になったの!」


 なるほど、それで爺さんの居場所を知っていたのか。


「逆にテリーとビリー様はどういった関係なの?」


 俺は堂々と応える。


「爺さんは俺の父親だ!」


 ウェンディは驚いて、椅子から立ち上がった。


「ビリー様に息子さんがいたの!?」


 爺さんは何も言わずに笑っている。


「ウェンディ、ちょっとした冗談だよ!俺も爺さんの弟子だよ」


 ウェンディはため息を吐いて椅子に座る。


「驚いたじゃない! ということは、テリーは私の兄弟子なの!?」


 爺さんは笑いながら口を開いた。


「うむ……ウェンディはテリーの妹のようなものじゃ!」


 ウェンディと目が合ったが、お互いに何も言わずにいた。


「わしに二人の弟子ができるとはな……わしが若い頃なら考えられなかった」


 さっきは冗談で父親だと言ったが、実際に父親みたいな存在だ。


 多分だが、爺さんに出会ってなければ今頃、俺は生きる意味を見失っていた。


 爺さんには言いたいことが沢山ある。


「そういや爺さん、ウルホルス街のコロシアム闘技場でミランダという魔法使いに会ったぞ」


 爺さんは笑顔から真顔に変わり、凄い勢いで言った。


「な……なにぃ!? ミランダがコロシアム闘技場に参加したのか!?」


「いや、参加はしていない」


 爺さんにコロシアム闘技場での出来事を話す。


「なるほどのぉ、あのミランダが表の世界に現れるとは」


「爺さんはミランダと一緒に冒険をしたんだよな?」


 爺さんは呆れていた。


「ミランダの奴、昔の話を掘り起こしおって……」


「そうじゃよ、昔にミランダと冒険者になってパーティを組んでたんじゃよ」


「じゃが、お互いに歳を取って二人揃って冒険者を辞めたんじゃ! 以降、奴とは会っていない」


 ウェンディは爺さんが昔に冒険者をしていたことを知らなかった。


「ビリー様って冒険者だったんだ!」


「ビリー様がいたパーティってどんなパーティだったの?」


 俺も気になっていたので、ウェンディに続いて聞いた。


「俺も気になっていた……どんなパーティなんだ?」


 爺さんは目を瞑り、ゆっくりと喋り出した。


「わしのいたパーティはな…………」


 爺さんやミランダがかなり若かった頃、この世界は闇に包まれていた。


 今では滅多に見ない、ゴブリンやオーク……他にも様々なモンスタがいたそうだ。


 それらのモンスターを生み出しのがのが魔王だ。


 魔王を倒すべく、集結したのが最古の冒険者パーティ、[フォー・ホライゾン]で爺さんとミランダのパーティだ。


 武闘家のマーシャル・ビリーに魔法使いのルーデル・ミランダ。 


 そして、剣士のガイルに回復特化魔法使いアーミルの四人組のパーティ。


 爺さん達は世界を平和にする為に魔王と戦った。


 世界は平和になり、世界を包んでいた闇は晴れた。


 だが、魔王は死んでいない。世間では倒したと言われているが、実際には五十年の封印をした。


 魔王が封印されたことによって、モンスターの数はかなり減った。


 しかし、時が経つにつれてモンスターが出現するようになった。


 その後にパーティは表舞台には出ることはなく、解散した。

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