第18話
決勝戦は前年度のコロシアム闘技場の優勝パーティー、[ブレイカーズ]が相手だ。
冒険者のパーティで五本の指に入ると言われるほど強い。
観客席では、今年の優勝も[ブレイカーズ]だろうと湧き立っている。
一部の観客は俺が優勝すると言ってくれている。正直なところ、嬉しい。
魔物化したライオンと戦ってから一時間の休憩に入った。
[ブレイカーズ]は勝ったとはいえ、剣士と武闘家は[コスタリアル]と戦った時にダメージを受けているから、回復するのに時間がかかるのだろう。
俺の場合は特にダメージはないが、本気の状態で戦いたいので、休憩の許可を容認した。
休憩の一時間は瞑想をして集中力を高める。
俺がこの世界に転生してから、[ブレイカーズ]は過去最強の相手だと思う。
俺の修行の成果を試すにはこれ以上にない相手だから、楽しみだ。
瞬く間に時間は過ぎていき、一時間は経った。
俺は決勝戦の開始十分前に武舞台に上がり、軽くウォーミングアップを済ませる。
観客席からは腹の立つヤジが飛んできていた。
「あの武闘家、[ブレイカーズ]に勝てると思っているのか!?」
「一丁前にウォーミングアップなんてしやがって! 大人しく[ブレイカーズ]に負けろ!」
いや、ウォーミングアップぐらい誰でもするだろ!
と思いながら体を動かして試合のイメージをする。
試合開始五分前になると、[ブレイカーズ]のパーティーが武舞台に上がってきた。
どうやら、剣士と武闘家の回復が間に合ったみたいだ。
[ブレイカーズ]の魔法使いと目が合い、魔法使いは俺に近づいてくる。
「待たせてしまってすまない。[ブレイカーズ]のリーダーをやっている、グレイスという。貴方は冒険者なのか……?」
グレイスは俺と同じ歳ぐらいの女性で、茶髪のロングヘアーで青色のローブを着ている。
「俺は冒険者じゃない。ただの一般人、テリーだ」
「一般人が魔物化したライオンを無傷で倒せるのかい?」
グレイスは満面の笑みで問いかける。
「うーん……、倒せるんじゃないかな」
「テリーは面白いわね。私の見たところ、一般人には見えなかったけど」
そう言われましても……。
グレイスは感の鋭い奴だな。
「そろそろ決勝戦が始まるけど準備とかしなくていいのか?」
強引に話を区切りにいく。
「そ……そうね、試合前に邪魔をしてごめんなさい。お互いにいい試合をしましょう!」
グレイスは[ブレイカーズ]の仲間の元へと戻っていった。
俺は気合を入れる為に、道着の帯を強く締める。
歓声が少しずつ高鳴っていく……。
[ブレイカーズ]の方も準備が整った様子だ。
運営の人間が魔法で炎をだしてカウントダウンを始める。
炎が十個の円状から一つずつ消える。
カウントダウンに合わせて観客も盛り上がっていく。
「[ブレイカーズ]! 今年も優勝しろよー!」
3
「武闘家の兄ちゃんも頑張れよー!」
2
「最高の決勝戦を見せてくれよなぁ!」
1
「GO!」
ついに決勝戦が始まった!
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