魔法の世界で魔法が使えなかったので武闘家で最強になる。

第17話

　魔物化したライオンは一直線に俺に向かってくる。魔物化しているだけあってかなり速い。

　魔物化した熊とは戦ったことがあるが、念の為[四刹二唱]で強化しておく。

　俺は爺さんに習った合気道で反撃を狙う。合気道は相手の力を利用して倒す武術だ。

　魔物化したライオンは力が強くて、爪が鋭い。当たってしまうと致命傷になる。

　俺が思っていた通り、爪での攻撃をしてきた。攻撃自体はかなり速いが避けられない程ではない。

　爪攻撃を避けて、魔物化したライオンの腕を掴み、勢いよく真上に振り上げる。

　バランスを崩して、武舞台の壁にぶつかった。少しは効いただろう。

　だが、すぐに体制を立て直してもう一度、俺の方に向かってくる。

　そんな簡単にはいかないよな。これで勝てたら楽だったのに。

　次は爪での攻撃ではなく、突進での攻撃をしてきた。

　懲りない奴め。何度でも合気道でカウンターしてやるよ。

　魔物化したライオンの頭を両手で掴み、突進攻撃の勢いを利用して巴投げで反撃をした。

　しかし、魔物化したライオンは空中で体制を変えて武舞台の壁を蹴って、爪での攻撃を繰り出す。

　こればかりは読めていなかった。

　即座に[四刹四唱]に切り替えて空中にジャンプして逃げる。

　観客は俺のジャンプの高さに驚いた様子だった。

「あいつのジャンプ力、おかしくないか？」

「魔法を使ってもないのに、なんてジャンプ力なんだ！？」

　そろそろ、俺からも攻撃をするか。

　空中から降りると同時に、魔物化した熊を倒した時と同様にかかと落としを食らわしてやる！

　魔物化したライオンの頭を狙って、かかと落としで攻撃を食らわす。

　攻撃が当たった時、大砲を撃ったような音がなり響く。流石にこれで倒れるだろう。てか、倒れてくれ。

　しかし、かなりタフで少しよろけたと思ったらすぐに俺の方に突っ込んできた。

　攻撃した感触的にこれで倒れると思ったのに……。

　なかなか倒れないので苛々してきた。

「こうなったら少しだけ本気を出して、[八刹五唱]まで強化して一撃で終わらせてやる！」

　突進に合わせて目を瞑り、集中して左手を前に出し、右手の親指を上に向けて拳を握る。

　魔物化したライオンの足音が通常の時よりも大きく聞こえる。

　近づいてくる……。

　もっと引き寄せる……。

　今だ！

「お前は本当に強かったぜ、[一刹十唱]……空手流・正拳突き！」

　闘技場全体に、魔物化したライオンの頭と俺の拳がぶつかった音が鳴り響く。

　魔物化したライオンはよろけながら俺の後ろに歩いていく……。

　そして、止まった瞬間に倒れた。

　観客席は少しの間、驚きのあまり静まり返っていた。

　あれ、歓声はないのか？

　俺は歓声がないのに驚き、観客を盛り上げる為に右手の拳を握り、上に突き上げた。

　すると、観客席が湧いた。

「うおぉぉぉぉぉ！！」

「あいつ、最後の技で一撃で終わらせたぞ！」

「ドデカイ音が鳴って目を瞑ってしまったが、目を開けたら決着がついていた！」

　そして俺は決勝戦に進出した。