第14話
トーナメントの組み合わせは各パーティの代表者がクジを引いて決める。
勿論だけど、俺以外はみんなパーティで四人から五人組だ。
一人で、一つのパーティを相手にしなくてはならない。
クジを引いて、俺の初戦の相手はAグループ予選を突破したパーティに決まった。
パーティ構成は魔法使いが二人に、剣士が二人の四人組だ。
初戦の相手の代表者は、クジを引いて対戦相手が俺だとわかった瞬間、俺を見て笑ってきやがる。
「お前が俺達の相手か……」
「はい、そうですけど何か?」
「いやぁ……まぐれで勝ち上がった、武闘家崩れのお前が相手でよかったぜ」
代表者は笑いながら侮辱してくる。
俺は試合が始まったら手加減せずにブン殴ることを決めた。
「そうですか……まぁ、お手柔らかに」
「フンッ、お前なんて一瞬で終わらせてやるよ」
高笑いしながらメンバー達の元に戻っていった。パーティメンバー達も俺を見て笑ってくるし、もう許さない。
トーナメントの一試合目は、両パーティ共に魔法使いが一人ずついる。
この世界では魔法使いを先に倒した方が勝つ。魔法使い以外の人間は、魔法使いを守り切るのが役割だ。
結局、どのパーティが決勝に上がってこようとも魔法使いは必ずいる。
俺は一試合目の途中まで観てから、自分の試合まで控え室で修行をする。
時間が経つ毎に、歓声は高まっていき修行に集中していても微かに聞こえてくる。
初戦から二時間程が経ち、とうとう俺の出番がきた。俺は爺さんから貰った道着を着て、闘技場の舞台に向かう。
舞台には予選の時とは違って、観客席は満席だった。この世界に転生してから、これだけの数の人間と会うのは初めてだ。
舞台に上がると、初戦の相手は既に舞台に上がっていた。
俺が舞台に上がり、すぐに試合が始まった。
相手のパーティはニヤニヤしながら言った。
「よく逃げずに来れたな、褒めてやる」
「俺達、[レッドハンター]の相手がお前なんかにできるのか?」
はぁ……苛々する。
なんで、まだ戦ってもないのに勝った気でいるだ。
「さっさとかかって来いよ? お前らは口だけか?」
相手は目付きが変わり剣士は剣を抜き、魔法使いは杖を構える。
「お前……生きて帰れると思うなよ?」
魔法使いの二人は魔法陣を展開して詠唱を始めた。剣士の二人も盾を構えて魔法使いを守る。
[四刹三唱]で両手と両足を強化して、相手に見えない速度で距離を詰める。
相手のパーティメンバー達は俺を見失い、戸惑っている。
「何処に隠れていやがる! 早く出て来い!」
隠れてなんかない……こいつらには見えない速度で周りを移動しているだけだ。
と言ってもこいつらは理解できないだろうけど。
「ここだよ……魔法使いが背中を取られてどうすんだ?」
魔法使いは詠唱に集中して、俺が背後に来たことに気付いていなかった。
魔法使いは身体を鍛えないので、防御力はない。背中の中心に掌をつけて、勢いよく押しただけで気絶した。
魔法使いが一人やられてようやく気づき、女の魔法使いは詠唱をして、剣士の二人は剣で斬りかかってくる。
剣士の顔面に飛び膝蹴りを入れて、もう一人には腹に正拳突きで気絶させた。
「瞬時に凍りなさい! [氷]魔法・[瞬冷]」
もう一人の魔法使いが詠唱を終えて、魔法を放ってきた。
俺は魔法を避けて、魔法使いの頭を掴んで脳を揺らした。
相手のパーティの全員が気絶した。試合が始まって三十秒の出来事だった。
観客は何が起きたのかわからない様子だった。
俺は難無く、トーナメントの初戦を勝利した。
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