第6話
少女は魔法で攻撃をするが、魔物化した熊は怯むことなく少女に襲いかかる。
魔物化した動物はかなり凶悪で、攻撃力や素早さも化け物だ。
どんな相手でも怯まずに襲いかかってくる。
俺は修行をする前は魔物化した動物を見つけるとすぐさま逃げていた。普通の人間がどう頑張っても勝ち目はない。
少女はどうやら魔法使いみたいで、攻撃魔法を屈指して戦うがまだ子供で魔法の威力は弱い。
このままだと少女は間違いなく負けてしまう。パーティーでもないかぎりもう勝ち目はない。
助けを求められてはいないが腕試しついでに助けることにした。
修行を続けて[二刹三唱]までは身体に負担なく使えたので、とりあえず両足を強化する。
両足を強化することによって蹴りは勿論、走る速さとジャンプ力まで上昇する。腕とは違って、かなり便利だ。
少女の前まで走り、魔物化した熊の爪攻撃を勢いよく蹴り飛ばす。
「大丈夫か? 今、終わらすから少し待っててくれ」
魔物化した熊は爪が割れて、少し怯んだがすぐに襲いかかってくる。
普通の人間が見たら速く感じるんだろうけど、今の俺にはかなり遅く感じてしまう。
俺はジャンプして攻撃をかわし、修行で身につけた、回転かかと落としを脳天に蹴り下ろす。
いくら魔物化した熊でも[二刹三唱]のかかと落としは耐えられなかった。
思っていたよりも弱くて驚いた。
せめて、3発ぐらいは耐えて欲しかった。これでは、実戦とも言えない。
今度、魔物化した動物に出会ったら[刹]の魔法は使わずに通常状態で戦おう。
少女の方に歩いて怪我がないか聞いてみる。
「無事か? 怪我はないか?」
少女は少々戸惑いながら返事をする。
「え……えぇ、少し擦りむいただけです」
「そうか、傷薬をやる。これを傷口に塗れば多少はましになるだろう。この森は魔物化動物が多いから危ないぞ」
少女は深々と頭を下げてお礼を言う。
「助けてくださって、ありがとうございました」
「気にしなくていいよ。じゃあ俺は修行があるからこれで……」
「あ……あの、名前はなんと言うのですか?」
「テリー。エリタルテ・テリーだ」
俺はそれ以上は語らず、生活拠点に戻った。
そういや、人間に出会ったのは爺さん以来だな。あの子、俺と同じ歳ぐらいの見た目だったし魔法も4属性、使っていたから貴族だろう。
てか、神様から与えてもらった[全属性能力]も意味がなかったなぁ。
まぁ、[武闘家]になったことだし、今は必要ないんだがな。それでも有れば絶対かっこよかった。
[ファイヤーパンチ]や[ブリザードキック]とかできたのに。
ん……?
待てよ……。
頭の中で[ファイヤーパンチ]や[ブリザードキック]をイメージしたら出せるんじゃないか?
自身の身体に炎を纏うだけなら魔力は必要ないはずだ。
実験の為、[ファイヤーパンチ]を頭の中でイメージをしてみる。
爺さんから習った型の最中にパンチと蹴りに炎を纏うイメージをした。
すると、炎が両手と両足に纏った。身体に熱さも痛みも感じない。
試しに木を蹴ってみると[刹]の魔法程の威力はでないが、蹴った木は勢いよく燃えた。
その後も[炎]だけでなく、[水]や[氷]なども試したが全て効果が出た。これなら、どんな相手でも対応できるし、戦い方の幅が広がる。
どうやら俺の[全属性能力]は魔法としては使えないが、[武闘家]としてなら使えるみたいだ。
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