羽がなくても

「どうしてキミには羽がないの?」

「元々はあったんだ」

「じゃあどうして今はないの?」

「ボクのパパとママが切り取ったからだよ」

「どうして?」

「わからない。でもボクは空の広さを知りたくて、いろんな場所に行きたくて、羽をたくさんつかってたからじゃないかなって思う」

「どうしてそう思うの?」

「パパとママはボクを信用してなかったんだよ。切られる時に、どうせ羽があれば危ないところや行ってはいけないところに行くだろって言われたんだ」

「キミは実際に危ないところや行ってはいけないところに行った?」

「一回ね。それから信用されなくなったんだ。でも、ボクはパパとママに気づいてほしいことがあって、それで行ってはいけないところに行ったんだ」

「でも、パパとママは気づいてくれなかったのね」

「うん。ただ信用を失っただけだった。それでしょんぼりしてる時に、ボクの友達がボクに夢を見つけさせてくれたんだ。それで空をたくさん飛ぶことになった。危ないところや行ってはいけないところには行かなかったけれど、遠くまで行くことはあったんだ。そしたらパパとママはどうせまた行ってはいけないところに行ったんだろって言って、ボクの羽を切ってしまったんだ」

「キミは切られることを反対しなかったの?」

「しようとしたよ。でも大きな声で怒鳴られたから怖くて何も言えなかったんだ。パパとママが間違ってることだってあるのに。それに、ボクの夢や趣味を否定したんだ。悲しかった、とても。子供の夢を応援したりするのが親じゃないのかな」

「そうね。でも、それを諦めたわけじゃないんでしょ?」

「うん。そんなことで諦めてたら夢じゃないよ。

「じゃあその夢に向かって進めばいいよ」

「そうしたいけど、手段がないんだ。本当はパパとママに相談したいけど、また大きな声で怒鳴られたり否定されたりするかもしれない。ボクはそれが、とっても怖い」

「そっか。どうしようもないのね。つらいわね」

「でも、君がいてくれるから、つらくても大丈夫」

「そう言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう」

「ボクは、夢を諦めたくないよ」

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