第27話セ◯ム…してますか?

 聖王国から戻って翌日。

 サークライの所に報告に行く。するとサークライがめっちゃ渋い表情で待ち構えていた。どうやら昨日の内に聖王国のマーサさんから連絡があったらしい。行動が早いなー。しまった…正直に話すしかないじゃないか。


「…随分な活躍をしたそうだねぇ、ユート君。」

「…まあ、魔王の権力を傘にしたのは申し訳なく思いますが…」

「てか君‼︎まんま宣戦布告って取られてもおかしくないぞ⁉︎ 魔王の眷族を名乗って大聖堂を破壊なんて‼︎」

「妹を家族の元に取り返す為ならなんだってやりますよ。」


 俺の素の言葉を聞いて半ば諦めるようにサークライが言う。


「…勇者を魔王都の中心に招き入れて…責任取れるのかい?」

「家族を迎える責任なら。」


 しばらく黙り込んでサークライは了承した。

ん?だいたい兄妹全員揃えろって言い出したのはあんただからな‼︎頭抱えても遅いよ‼︎




 サークライの許可を得て転移門を使う。

 ミカさんの街工場まで足を運び、聖王国と魔王国間のセ◯ムプランの検討を始める。

 

「聖王国の城壁沿いに監視カメラを置くのを基本に考えたんですが。」

「王国に近い被害に遭いがちな村々やキャラバンに警報機を設置する案もあるわね。どちらにしろ魔王国内にサークライに頼んで専従で警備に就く部隊を創設してもらわないとね。」


 ちゃっちゃと図面を引いてポイントポイントにカメラの位置と距離を測るミカさん。頼りになる人だ。ネットで検索して商品を次々にポチる。…異世界人とは思えないラジカルさ。


「心配いらないよー。かかった経費は全部サークライに請求するから。」


 全部揃ったら現地に取り付けに行く、と軽く言われた。それと新しい改造済みのスマホを貰う。


「大丈夫グリュから貰ったスマホだから。安いやつだけどね。」


 わかってます、ソシャゲとかする訳じゃないし…異世界にはソシャゲとかないし…

⁉︎待てよ⁉︎


「あの‼︎ 衛星通信でこのスマホ向こうでも使えるんですよね⁉︎ もしかして…こちらのSNSとかソシャゲとか動画サイトとかも向こうで見れるんじゃないですか⁉︎」

「…うーむそこに気付いたか。さすが男の子。でも課金はやめときなさいよ?」


 イヤッホーオオオオ‼︎‼︎


 アニメが見れるううう‼︎ ソシャゲが出来るううう‼︎

帰りにプリペイドカードを山程買って帰ろ…ああああああああああ。日本円の手持ちがそんなにない。転移する前に財布に入っていた数千円。その他は向こうの通貨のみぃぃぃぃ‼︎


 ミカさん、向こうの素材をこちらの日本円に換金する方法を知りませんか? え、母ちゃんに止められてて教えられない?…

 母ちゃんは異世界で働いてたのに日本円持ってる。という事は換金方法があるはずなんだが…


 がっくり肩を落としたまま俺は魔王国に戻った。




 ギルド学院に久々に戻って来たらリィカとレンはすっかり委員長のパーティーに馴染んでいて楽しそうだった。…あれ?俺の居場所は? おやつ作ってあげるよ?え?委員長が毎日作ってくれる?しまった。学院祭の特訓でクラスメイトの女子はあらかた簡単なスイーツが作れるのだ。

 …俺のアドバンテージが…もしかして俺いらない子?


 膝を抱えて自室のベッドの上で泣いてます。


 それからしばらく委員長のパーティーと組んだリィカ達に俺が混ざってクエストをこなした。


「行ったわ‼︎リィカ引き付けて‼︎ 火力組は集中‼︎ リンはバフりながら機を見て回復ね‼︎」


 …リィカとレンがまた実に委員長のパーティーと上手く融合しててねえ。 あれ?俺の出番は?


「ユートきゅん、ご飯作って♡ 美味しいやつね‼︎」

「はーいはい」


 飯炊き&雑用である。 どうしてこうなった⁉︎





 冬になってしばらくした頃である。

 学院の庭でショートソードの素振りをひたすら繰り返す俺の前に来客がやって来た。


「兄さん。本当にこっちではずっと女の子なんですねぇ。」


 向こうの世界に住んでいる妹、カナコがそこにいた。おお!よく迷わず学院に来れたな。


「母さんに連れて来てもらったから。空気はいいねこっちは。街も予想より賑やかだし。」


 カナコはドワーフの里以外は初めて見るって言ってたもんな。ミカさんは?と聞くと今はサークライと打ち合わせらしい。セ◯ムの設置計画の。


 カナコを連れて寮の食堂へ行く。この時間駄妹共がおやつを食べているはずなのだ。ほうらいた。いい加減太るぞコイツら。


「リィカ、レン‼︎ お姉ちゃんが来たぞ‼︎ ご挨拶なさい。」


 リィカとレンは周りをキョロキョロ見渡して頭を捻る。?マークが浮かんどるな。むう、カナコはドワーフだからな他の人種より背が低く幼く見られがちだ。リィカより小さいからなぁ。でも14歳。お前達よりお姉ちゃんだぞ。ほらご挨拶‼︎


 ようやくカナコを見つけた二人は挨拶をする。

 

「…リィカ。13歳じゃ。龍族の姫であるぞ。」

「レンです。13歳です。鬼族です。リィカのお姉さんです。」

「カナコ。14歳のドワーフよ。よろしくね。」


 三人とも握手をしようと手を出す。仲良くなれそうならいいな。


 リィカとカナコが握手をした瞬間カナコの手がスポーンと抜ける。驚くリィカ。しかもその手がリィカにしがみついて腕から這いずり上がって来る。ガシャガシャいいながら。


「ぎゃあああああああああ‼︎」


 泣きながらパニックになって身体をぶん回して逃れようと暴れまくるリィカ。


「あははは‼︎ ごめんごめん、マニュピレーターだよ。

本物はこっち!」


 笑いながら本物の右手を出すカナコ。


「な、何をするんじゃあああっぼけぇっ‼︎」

「お姉様に暴言はいけません‼︎」


 ガスッ  リィカの頭にゲンコツを落とすミヤマさん。いたのね。頭を抱えるリィカ。うむ可哀想。

一方マニュピレーターを見て感心しているのがレンだ。


「機械…機械の腕ですか…⁉︎ すごい技術‼︎ カナコ姉さんすごいです‼︎」

「ありがとう。異界の技術を使えるドワーフだからね。機械には強いよ!」


 ふふふと笑うカナコ。レンとは上手くやれそうだ。

妹達のやり取りを見てるとほっこりしてくる。


「みんな馴染んだみたいだな。そうだ、久しぶりにみんなでお風呂に入るか? 大浴場は気持ちいいぞ⁉︎」

「え⁉︎ 兄さんこの子達とお風呂入ったの⁉︎犯罪でしょ⁉︎」

「うーんいくら見た目が美女でもなーお兄ちゃんじゃしのう。」


 非難轟々である。ん?どうしたレン?なんか悪い顔してるな?


「…僕は別にいいよー。条件さえ呑んでくれればね。」


 何?それ?レンの言う条件 その1。目隠しする。その2。私達が身体を洗う。

………

 俺、オモチャじゃん…




 やいのやいのやってるとサークライの所に行ってたミカさんから連絡が入る。もちろんスマホに。

リィカとレンばかりでなくテラスにいたクラスメイトまでどよめく。


「な、なんだそのツルツルした光る魔道具は⁉︎ 初めて見るぞ⁉︎」

「ドワーフ謹製の異界の技術を使った魔道具だよ。離れた場所の相手と会話出来るんだ。」

「「「おおおおおお‼︎すげえ‼︎」」」


「?なんか後ろが盛り上がってるようだけど大丈夫?」

「異界の文明を目にして興奮してる学生共がいるだけですよ。で、どうしましたか?」

「設置場所が粗方決定したから。早速取り付けに行って来て。」

「…は?」

「魔王国内はともかく、聖王国の外壁にセンサー付けられるの行ったことあるキミしかいないでしょ。」


 あー。なるほど…。


 ミカさんはタンザの町を中心に街道沿いにセンサーを備え付けて行くと言う。俺は聖王国の国境門から城壁沿いにセンサーを設置する、と言う訳だ。


「わかりました。いつですか?」

「今からだよ。あたし達はもう出発してる。タンザで落ち合いましょう。」


 急ぎの仕事になった。となるとまた俺だけ飛んで行くのでリィカとレンは留守番…


「妾は行くぞ。ドラゴンになって飛べばすぐじゃ。」

「あー僕も行きたいー。留守番飽きたー。」

「あ、あたし三輪バギー持って来たから乗ってく?」


 は? 何言っちゃってるのカナコ?そもそもお前さん14歳でしょ⁉︎免許持ってんの⁉︎


「異世界に免許なんか関係ないでしょ。大体工場内でなんでも乗り回してるよあたし。」


 そう言って学院の外の通りに自分の【ボックス】から三輪バギーを取り出す。驚いた。サブマシンガンぽい何かで武装してある。どう見ても日本ではお目にかかれないシロモノだ。


「カタログからあたしが作り上げたから。架空の機械だよ。」


 とんだやんちゃ娘である。大体タンザまでの道知ってんのか?え?GPSがある…?マジか…地図情報もあるのか。その為の通信衛星か…。恐るべし現代技術を駆使するドワーフ。


 カナコをこの世界の街道に出すのは心配だがリィカとレンはCクラス冒険者だからカナコを充分守れるだろう。ましてやドラゴンが追走してる謎の乗り物を襲う盗賊もいまい。


 充分注意して来いと言い含めて俺は一足先に飛んでタンザに向かうのだった。





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俺、ハイエルフになりました 〜異世界で夢の妹パラダイス〜 りろ @chibadi

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