第15話レン=シュバリエ=モンマ 13歳

 拙者…僕はレン=シュバリエ=モンマ。鬼族の落ちこぼれ、と呼ばれてます。鬼にとって一番大事な闘気を纏う闘いが苦手だからです。闘気を纏うほどの筋肉がないのです。鬼なのに何故かガリペチャに育ちました。

 小さい頃から虚弱だったので身体を動かす訓練には何一つ参加できませんでした。不憫に感じた長老衆が本を与え、魔術をちくちく教えて下さいました。


 母様は鬼族が誇る【闘気使い】でSクラス冒険者。正に鬼の中の鬼です。僕はどうしてこんな風に生まれたんでしょう…。

 でも母様は二人きりになるといつも可愛がってくれました。


「お前ははあたしとお父さんの大切な宝物なんだぞー」と恥ずかしがりながらたまにお父様の話をしてくれました。冒険者として出会った事、ケンカをしなざらやがて恋に落ちた事、そして…お父様が【異界の魔王】と呼ばれた事。たまに里の噂話でも聴きます。人間に反旗を翻し亜人を統率して魔王国を作った英雄。【異界】から文化をもたらし、農産物も工業製品も革新的な技術を導入させ、魔王国の住人に心の豊かさをもたらした功労者。 会えないけれど自慢のお父さんになりました。


 だからこそ余計に落ちこぼれの自分が許せなくて。

同年代のみんなは次々と体術・闘気術を習得していくのに自分は置いてけぼり。辛かった。

 時間だけはいっぱいあったので毎日本ばかり読んで。どんどん内にこもっていきました。もう気持ちはニンジャです。忍びまくりです。もちろん鬼族にそんな職業はありません。あ、母様に聞いた話だと【魔王国十傑】にはいるそうです、ニンジャ。


 そんな自分を変えたくて、13歳になったら【外】に出よう、と決めていました。魔王都のギルド学院に入って一人前の冒険者を目指すのです。冒険者なら人種関係なく前衛職でなくとも生きる道がある、そう思ったからです。10歳頃から地味に体力をつけるトレーニングを始めました。

 もちろんギルド学院に入らなくても冒険者になれます。母様の時代には学院はありませんでしたし。ただ…

学院には特典がありました。…卒業時に最優秀生徒が魔王様に謁見出来るというものです。

 …お父様。 お父様に会えるのです。


 母様は体力のないあたしが街でやって行けるかとても心配していましたが、長老衆から教わった回復魔術や補助魔法、薬学を披露したらそれなりに納得してくれた様子で学院に送り出してくれました。ありがとう母様。こうして僕は魔王都に出て来ました。


 ギルド学院ではとてもラッキーな出会いがありました。初日に知り合った銀色のロングヘアー、碧がかった瞳、ハイエルフの美少女。しかも一人称が【俺】な男前な美少女。ユートです。

 ユートは華奢なエルフが多い中スタイルが抜群に良く、弓も使えばロングソードも使える遠近肉体戦闘に長け、それ以上に全属性の攻撃魔法が使えあまつさえ未知の新魔法まで使える超チーターでした。

しかも冒険者とパーティーを組んだ経験もあり、クエストを引っ張って行ってくれるリーダーに相応しい頼りになる人です。

 初めのうちは鬼らしく双爪を使った闘気戦闘をしていたらすぐにユートにデメリットを指摘され、得意な補助魔法と回復魔術一本で行けと言われました。決断力も優れてます。


 その上趣味が手料理、と女子力が高すぎます。

同室のもう一人、龍族のお姫様リィカと僕は本当にラッキーだと手を合わせて喜んでました。


 討伐クエストも順調にこなし、僕達のパーティーはダントツの成績を挙げて【魔術大会】では僕が優勝する事が出来ました。地道に回復魔術を習っててよかった。このまま行くと最優秀も取れそうで心が踊りました。…きっとお父さんに会える…。 


 そんな冒険者生活に慣れて来た頃、あの【武闘大会】がやって来たのです。エキシビション、その対戦相手が… 母様でした。恐ろしい事です。向こうは全員我々の母親を連れて来たのです‼︎ 魔導王サークライはなんと卑劣な手を使うのでしょう。

 そこで知ったのは我々『魔王の眷族』の母親は三人共『魔王国十傑』だったのです。

 勝てる訳がねー‼︎‼︎


 案の定我々のボロ負けでした。あらゆる攻撃が通用しません。それどころか何の魔法か、突然ユートが母親の攻撃で人間の男の子に変えられてしまいました。

ショックで全てが止まりました。ユートが気絶させられた時点でリィカがパニクって泣き出し、ギブアップするしかありませんでした…




 その後の母様達のお喋り会で僕達『魔王の眷族』が全員兄妹だと発覚しました。

…お、お父様…な七人もお嫁さんがいるって…

き、汚いっ…幻滅ですっ…超ショックです…

でも魔王らしい…のかな…


でも…兄妹がいたのは嬉しい…お兄ちゃんはヘンタイ女装家だったけど…妹達にオッパイやお尻を触らせて喜ぶヘンタイ…


違う? 




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