逮捕!? 宇宙海賊!

『んもうっ! もっとデリケートに扱いなさいよ! 脚を持たないでよ! プランプランして怖いじゃないの!』



「うう、あんなガキに負けるとは……」


 銀河警察の宇宙船に連行され、星雲大帝が喚く。対照的に、緋刀は憔悴しきっている。


「星雲大帝は、こちらが拘束した。ご苦労ご苦労」


 銀河警察の制服を着たパイセンが、敬礼をオレに送った。

 この間、ショッピングモールにいたパイセンだ。不定期勤務な忍者業務を抜け、銀河警察へ入隊したのである。


 オレのオヤジも、時代が違えばこういう生き方ができたのかな。


「そういえば、欠片どうだった?」

 パイセンに促されて、オレは冷や汗をかく。


「あのですね。実は破損してしまいまして。全部星雲大帝のせいです。はい。あいつは許せませんなあ。アハハハ!」


 オレは笑って誤魔化した。


 おそらく大帝が真実を話した所で、誰も信じないだろう。


 欠片だった金属の粒は拾って、優月に全部あげた。

 

 おやっさんの声は聞こえなくなっていたが、形見として持っておく程度ならいいと思う。


「ところで、お前さん、宇宙海賊だよな? この間はよく分からなかったが、パルの存在でようやく思い出したぜ。相当強いってな!」



 銀河警察の集団が、一斉に優月を取り囲む。トリガーに手をかけている者まで。



「あの、こいつは、もう改心した。もう人を傷つけることはない、と思うんス」


「しかし、我々には彼女を取り調べる義務がある」

 柄にもなく、パイセンが警察官口調で語る。

 銀河警察も譲らない。




「こいつがいなかったら、星雲大帝も倒せなかった。欠片の誤作動も起きなかった。今頃世界は壊滅していたんだ。こいつは世界を救ったんだよ!」

 オレは必死になって弁解した。




 実際、優月は悪くない。悪いのは全てカルキノスと海蛇団だ。


「彼女には余罪がある。それを調べないことには」


「そんな!?」


「もういいわよ、虎徹」

 優月が、銀河警察の前に立つ。


「これは、アタシ様の問題よ。変にアンタが庇えば、アンタたちにさえ迷惑が掛かってしまうわ」


「でも、逮捕されたらお前は二度と出られないぜ。ネクサスパイルは全宇宙で指名手配されている。賞金だって掛かってるのに」


「いいの。どうもありがとう。アンタの気持ちだけで十分よ」

 優月がこちらに振り向く。


 目が合うと、オレはスカスカの空気を噛みしめるような気持ちになった。


 優月と過ごした日々を思い出す。あっという間の数日間だった。

 優月とも分かり合えたとはとても言いがたい。


 なのに、こんなにもオレの中で大きな存在となっている。


「あたしね、アンタとのデート、楽しかった」


 その笑顔は、とても牢獄に行くような少女が出せるものではなかった。


 バカ野郎。お前がいなくなったら、この先つまんねえよ。


「さあ、銀河警察さん、どこへでも行ってやろうじゃないの」

 観念した優月が、手首を差し出す。




 パイセンが、優月の腕を持ち上げたときだった。




「あの、いいですか?」

 カガリが手を挙げて、パイセンの前に立つ。


「なんでしょう、カガリ様」

 パイセンが、カガリに敬語を使う。


 MIBはいわゆるお役所なので、銀河警察より立場が上なのだ。

 

「いやあ、申し訳ない。ボクの人違いでした。彼女は河南優月、地球人ですよ」

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