反転するデスゲーム 〜ここで負けるわけにはいかない〜

あるてあ

第1話

 そう、ここからがスタートだ。


「始めよう、今日から」


 闘技場の舞台から見える霞がかっている殺風景な空を見つめ、俺はこう決心した。



 ◆



「バ、バカな……」


 俺の言葉の後に、奴はこう呟くのだった。


「お前は強かったよ。けど、これで終わりだ!」



そして今この瞬間に、俺と奴の運命が決まる──。



 勝者は今後の昇進が確約されるが、敗者は容赦なく切り捨てられてしまうのだ。


 この残酷な戦いを強いる女王は、今でも冷めた目でこちらを見つめ、観客の阿呆どもはまるで一興であるかのように酒を飲みながら騒いでいる。


 交わる剣が激しい金属音を上げる。一振り一振りに己の全てをかけ、死力の限りを尽くす。


「何故だ! さっきまで俺の方が強かったはずなのに……!」


 身体がミシミシと音を立てる。血管が何本も切れているのかもしれない。だが、今はそんな事はどうでもいい。


「うおおおおお!」


「お前っ! そんな力一体どこから……!」


 俺の体がどうなろうと構わない。生き残るには、奴よりも強くなくてはならない。せめてこの戦い、いや、この瞬間だけでも。


「ここで負けるわけにはいかないんだあぁぁぁ!」


「くっ……」


 俺は自分に残された全ての力を振り絞って剣を振るう。今は奴の表情など気にしている余裕はない。


「くそおおおおお!!」


 俺は自分の無力さを呪った。言葉だけではどうにもならないことは知っている。やはり、この世界は

結果が全てなのだ。


 喉元に突きつけられた剣を、悔しさという一言では表せない程の感情とともに見つめる。


「力、力さえあれば……」


 もはや俺になす術は残されていない。剣を握る拳から血が滴っている。絶体絶命の状況に陥った俺はこう呟いた。


「ここまでか……」


 逆にさえ、なっていれば──。

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