アガレス5

「ちょっとちょっと! 消えるの早すぎない!」


地面に着地したウロコが嘆いた。


『アホ。お前が遅すぎるんだ。気づいていないのか? さっきより奴の地中に潜るスピードが速くなっていることに』


アンマリが言った。


「え? そうだったの?」


『……はぁ。竜の動体視力ならそれくらい容易に判断できる。完全にお前の落ち度だな』


「う、うるさいなぁ。というか分かってんなら……これも習うより慣れろ、と」


『そういうことだ』


「うう。でも、このままじゃ、慣れる前に二人仲良くあいつの胃袋の中に引っ越しよ?」


『……だろうな。だからアレを使う』


「ア……レ?」


ウロコは小首を傾げた。


『ったく、察しの悪い奴だ。この前、村で救ったドラゴンから受け取ったモンがあるだろ』


「ドラゴン? ……ああ、そういえば!」


ウロコはふところから一枚の透明な札を取り出した。


「そう言えばこんなもをもらってたわね。で、これがどうかしたの?」


ウロコが尋ねた。


『その札の名は竜符。各々のドラゴンの持つ固有能力の一部が封じ込められている物だ』


アンマリが答えた。


「リュウフ? コユウノウリョク?」


ウロコの脳内で疑問符が大量発生した。


『まあ、こいつも習うより慣れろだな。お前の右手の契約紋の光にその札の紋章を照らし合わせろ』


「えーと……こう?」


ウロコは自身の右手の甲の契約紋に竜符をかざした。


『バアル』


突如、契約紋から音声が発せられた。


「わっ! 何かしゃべった!」


ウロコは驚愕した。


『その音声は竜符が契約紋に認識された証拠だ。それよりも紋を見やがれ』


アンマリの指示どおり、ウロコは右手の契約紋に視線を落とした。


すると、契約紋の中から、一丁の小銃が出現した。


「おお!? ピストル?」


ウロコはその小銃を眺めながら言った。


『さっきの音声にあっただろ。「バアル」それが前回お前が救ったドラゴンの名だ。そして、その銃こそが奴の固有能力を具現化した物だ。そいつの使い方は……』


「習うより慣れろ、でしょ? さっそく使わせてもらうわ!」


『ふん。そうだったな』


「へへ。これでも近所のお祭りじゃ射的屋荒らしと言われてるのよ。銃の腕には自信あるんだから!」


『御託はいいから、とっととやれ』


「はいはい、りょーかい!」


そう言うとウロコは右手で小銃を構え、ちょうど地中から飛び出した悪魔に狙いをつけて、その引き金を引いた。

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転移少女は竜女と歩む〜ウロコとアンマリの冒険譚〜 ジョン @jon5

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