アガレス4

『……ふん、なるほどな。派手なアクションを起こすことで、わざとこちらの居場所を相手に知らせるってわけか』


アンマリが言った。


「ご名答! ……そして!」


ウロコがそう言った次の瞬間、彼女の背後から、地面を割いて悪魔が姿を現した。


「お久しぶり……ね!」


ウロコの放った左拳のストレートが悪魔を捉え、その体を遥か後方へ突き飛ばした。


「うーん! いい感じの手応え! 今のでドラゴンに戻るんじゃないかしら?」


ウロコは悦にひたりながら言った。


『はたして、そうかな?』


「え?」


アンマリの言葉にウロコが反応した次の瞬間、突き飛ばされた悪魔が立ち上がり、再びその身を地中に下ろした。


「うっそ!? まだピンピンしてるじゃないの!」


ウロコは驚愕した。


『まあ、炎を受け付けないほどの堅牢な皮の持ち主だからな。お前のげんこつ程度でのされる相手じゃないだろ』


アンマリが言った。


「うぅ……だったら、もう一発打ち込んでやるだけよ!」


ウロコは再び、大地に向けて全体重を乗せた拳を叩き込んだ。


「さあ、私はここよ! 出てらっしゃいな!」


ウロコが叫んだ。


しかし、地中からは何も姿を現さなかった。


「……あれ? 出てこない」


ウロコが呟いた。


『……はぁ。悪魔を舐めすぎだ。奴らは二度も同じ策にはまる程、やわな連中じゃない』


アンマリが言った。


「え? そうなの? ……というか、分かってんなら先に言ってもらえないかな?」


『習うより慣れろ、だ。さっきの策が上手くいったことで、いい気になってる奴にはいい薬だと思うがな』


「何よそれ、感じ悪いなぁ。あなたどっちの味方なのよ?」


『さぁな。それもお前自身で見定めることだな』


「はいはいそーです……かっ!?」


ウロコは咄嗟にその場から真横に跳んだ。


彼女の左肩を、地面から姿を現した悪魔の爪がかすった。


「あだだだ! ……つうぅ、どうやらあなたの言うとおりみたいね」


『ふん。今の一撃で、のぼせた頭は冷えたか? ……そら、次が来るぞ!』


アンマリの忠告と共に、再び地中から姿を現した悪魔が、ウロコに向かって襲い掛かった。


「おっと! こっちだって、二度も同じ策は食わないわよ!」


ウロコは背中の尾で大地を叩いて跳躍し、咄嗟に上空へ避難した。


「お次はこっちの番……あれ?」


ウロコの振り下ろした爪は、再び空を切った。


彼女の視界からは既に悪魔の姿は消えていた。

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