アガレス3

「おっと、やってくれるじゃないの。こちらも反撃させてもらうわよ!」


ウロコは左手に力を込め、自身の爪を竜のそれへと変化させた。


『それでいい。焼いてダメなら切るまでだ。竜の爪の鋭さ、とくと味合わせてやれ』


アンマリが言った。


「オーケー!」


ウロコはそう言うと、大地を蹴って飛翔し、悪魔との距離を詰めた。


「切り捨て……ごめん!」


ウロコの振り下ろした爪の一撃が悪魔の体の一部を捉えた。


「よっし! これならダメージを与えられるわ!」


ウロコは小さくガッツポーズをした。


『ああ。だが今の掛け声は何なんだ?』


アンマリが尋ねた。


「ん? ああ、この前時代劇でやってた奴のマネよ。イケてるでしょ?」


『はぁ……いちいちやかましい奴だ』


「それはこっちの台詞ね。いちいち、私のアレンジに口を挟まないでもらえ……っと!」


ウロコは悪魔の尾の一撃をかわした。


「ふぅ、危ない危ない」


『まったく。口よりも体を動かせ。くたばりたいのか?』


「冗談。こんなところでは終わらないよ」


『だったら、とっとと目の前の奴を大人しくさせろ』


「言われなくても、分かってるよ!」


ウロコは再び悪魔に接近し、爪を伸ばした左手を構えた。


「くらえぇ!」


ウロコは左手を振り下ろした。


しかし、その手は空を切った。


「ありゃ?」


ウロコら目を見開いて驚愕した。


それもそのはず、先程まで視界に捉えていた悪魔の姿が、一瞬の内に消えてしまったからである。


「……消えちゃった。どこに行ったのかしら?」


ウロコは小首を傾げた。


『何を呆けてやがる! 下を見ろ、下を!』


アンマリが叫んだ。


そして、ウロコは足元に視線を落とした。


するとそこには、大地をねじ切る様にしてできた大穴があった。


「うわっ!! ……何この穴? こんなのあったかしら?」


『アホ。どう考えても悪魔の野郎が地中に逃げ込んだ跡だろうが』


「なるほど。要するに穴を掘って逃げたって……」


『ことだと思うか?』


「冗談。私の攻撃をかわす為に一時的に身を隠したんでしょ? そして奴は今、この荒野のステージ下から」


『お前を狙っている。さあ、どうする?』


すると、ウロコは右拳を左手のひらに打ち付けた。


「どうもこうも、常に自分側にアドバンテージを持たせるのが勝負の基本よ。奴が顔を出すのを、ただ待っていたりはしないわ」


『ほう。存外、筋の通ったことを言うものだな』


「へへ、何かのスポーツ選手がテレビで言ってた」


『……なんだ受け売りか。で、具体的にはどうするんだ?』


「どうって……こうするのよ!」


ウロコは近くの地面を力いっぱい殴った。

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