第12話:初討伐の戦利品



 愛那はライツからもらった魔石を腰に引っかけた袋の中へ落とすと、次の討伐対象へと移動する。

 黄色のスライムだ。

「炎よ」

 先程ライツが見せてくれた火魔法で挑戦する。

 愛那がイメージした炎が手の平から浮かび上がる。

(これじゃあ小さ過ぎるから・・・・・・魔力量を調整)

 皆に見守られながら真剣な表情で炎を見つめ大きさを調節する。

(よし! これで・・・・・・)

「行け!」

 炎が勢いよく対象のスライムへと飛んでいく。

 ボフッ!

 黄色のスライムが炎に包まれ次の瞬間には中央の魔石に全て吸収された。

「やっ、たー!」

 ピョンピョン跳ねながら満面の笑顔で喜ぶ愛那。

 ライツはそんな愛那に微笑み「おめでとうマナ」と言うと、討伐した黄色いスライムの魔石を拾うように促す。

「初討伐の戦利品だ。マナ自ら手に取るといい」

 愛那は頷くと黄色の魔石を拾い上げ、それを見つめる。

(よかった。問題なく討伐出来た。・・・・・・神様。ようやく私、救世主としての第一歩を歩き始めました!)

「マナ様、初討伐おめでとうございます」

 愛那は声をかけられたナチェルへと笑顔を向ける。

「ありがとうございます!」

「その魔石は袋の内ポケットに入れて他の石と別にしておくといいですよ。初めての討伐で手に入れた魔石は、討伐者にとって特別なものとなりますので」

「特別?」

 ナチェルは頷き自分の首にかけられたペンダントを取り出した。

「特別と言っても気持ちだけのものですが、これが私の初討伐の時の魔石です。初心を忘れないよう討伐の際はお守りとしていつもかけるようにしています」

 ペンダントトップに緑色の魔石。

「わぁ。いいですね」

 そう言って愛那は自分の黄色の魔石を見る。

(初心忘るべからず。だね)

「私もナチェルさんみたいにペンダントにしたいです!」

「わかりました。帰ったらそのように手配いたしましょう」

 ナチェルが微笑んで応える。

「皆さんも初めての魔石はお守りとしてペンダントにしてるんですか?」

 愛那が男性陣に訊ねると微妙な笑顔を返された。

(?)

「マナ。男の場合は愛する女性にプレゼントする、というのが一般的なんだ」

 ライツの答えに愛那が驚く。

「えっ?」

「ハリアスは結婚の時に指輪にして奥方に贈ったのだろう?」

「はい」

 ハリアスが微笑んで答える。

「そ、そうなんですね」

(・・・・・・これは、私、訊いてはいけない質問をしてしまったのでは?)

 ライツの初討伐の魔石は今どこにあるのか?

(もしかしたら他の女性にプレゼントしたって可能性だってあるじゃない!)

 固まったままそんなことをグルグル考えていた愛那の頭にライツの手がポン、と乗せられた。

「えっ・・・・・・」

「何て顔をしてるんだ? マナ」

「ラ、ライツ様?」

 顔を上げるとライツが楽しげに笑っている。

「俺の魔石はちゃんとルザハーツ城に保管されてあるはずだから」

 愛那の表情がパアッと明るくなる。それを見たライツの口からクッ、と笑い声がこぼれた。

「マナ。そんな可愛い反応されると困ってしまうから、二人きりの時にしてくれないか?」

 ライツの台詞に愛那の頬が瞬時に赤く染まった。




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