第11話:うわ~、スライムがいっぱい~。



 ハリアスが先頭を歩き、次にライツと愛那。その後ろにモランとナチェルが続く。

 道から外れ、端に草の生い茂る小道の坂を下るとその先に川原が見えてきた。

 そこが今回の彼等の目的地だった。

「ここにスライムや他の弱い魔物が生息している。マナ、足場が悪いから転ばないように気をつけて」

「はい」

 愛那はそう答えつつ、ナチェルが用意してくれた靴がしっかりしているので小石や砂利はそんなに気にならなかった。それよりあちらこちらに見える綺麗な色をした物体に意識がいく。

(・・・・・・2、4、6、8、10、12、14。うわ~、スライムがいっぱい~)

 愛那が立つ場所から見えているだけでも岩の上や川の中に様々な色のスライムがいる。

「ずいぶん多いですね」

 モランがそう言うと、ハリアスが「あぁ」と頷く。

「動きが遅く、触れなければ危険が低い魔物という理由で、この時期にこの場所に来る者などいないのだろう」

 魔物の大量発生という今だからこそ、こんなにスライムがいるらしい。

 気分を高揚させた愛那がライツへと話しかける。

「これだけいたら討伐の練習がたくさん出来そうですね!」

 相変わらず魔物討伐に前向きな愛那にライツが笑う。

「頼もしいな。よし。じゃあ行こうか。まずは俺がやってみせるから、マナは見ていてくれ」

「はい! よろしくお願いします!」

 歩き出したライツの後を追い、全員が同じ場所へと移動する。


 最初の討伐対象は岩の上にいる緑色のスライムだ。

「魔物討伐の基本として重要なのは、いかに少ない魔力量で相手を倒すか、だ。・・・・・・マナの魔力量は大きいから他の者達に比べて魔力切れの心配は少ないかもしれないが、魔力には限りがあり、いつ、どんな状況に陥るかわからない。たくさんの魔物を討伐するには、たくさんの魔力が必要になるということだ。だからスライムみたいな魔物に対して無駄に過剰な魔力を使わないことが大事なんだ」

 ライツの言葉に愛那が「はい」と応える。

「まずは魔力操作の初級。スライムを討伐するのに必要な魔力量は・・・・・・このくらいか」

 そう言ったライツの右手から炎が出現する。


 通常、攻撃魔法を習得したい者が初めに挑戦するのが、このように魔力を具現化させることである。

 自分と相性の良い属性を探り、魔力を具現化できたら、それを大きくしたり小さくしたりして魔力量を意のままに調節することを覚えるのだ。

 愛那が初めて使った冒険ギルドでの攻撃魔法は、その初心者の過程を飛び越え、魔法使いとして中級以上の実力を認められるレベルのものだった。

 順番は逆になってしまったが、愛那はナチェルの指導の下、この初級の魔力操作もさして苦労することなく習得した。

 今は見ているだけと言われている愛那の手がうずく。

(私も早くやってみたいー!)

 愛那の視線の先に、ライツの手と同じくらいのサイズの炎が浮かんでいる。

 その炎が緑色のスライムへと勢い良く飛んでいくと、ボフッ! と音を立てスライムが炎に包まれた。

 そして次の瞬間には炎ごとスライムの体内にある魔石が輝き全てを吸い込んでいく。

(うわあああ! 本当に自分の体を吸収してる!)

 話には聞いていたが、その様子を実際に見て感動する愛那。

 ライツがそこに残された緑色の魔石を拾うと愛那へと差し出した。

 受け取って、その綺麗な魔石をマジマジと見つめる愛那にライツが告げる。

「魔力量は今くらいの大きさで、マナの使える六属性全てで討伐可能か試してみよう」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る