第13話:聖魔法
愛那は黄色の魔石を袋の内ポケットの中へ入れ、先程ライツにもらった緑色の魔石も同じ内ポケットへと移動させる。
(これもライツ様から初めていただいた特別な石だから、私の初めての魔石と一緒に大事にとっておこう)
俯いて小さく笑んだ愛那は顔を上げて、次のスライム討伐に気合いを入れる。
それから愛那は危なげなく次々と魔法を使いスライムを討伐していった。
ライツとナチェルがそんな愛那をすぐ近くで助言をしながら見守り、少し距離を取った場所でハリアスとモランがそんな彼らを二人並んで見つめていた。
「流石というか、魔法を習って数日とは思えないな」
感心したようにハリアスが言うと、モランが大きく頷いた。
「同感です。魔力操作をあんな簡単そうに・・・・・・。自分の学生時代を思い出して、乾いた笑いがこみ上げてきますよ」
「確かに。学生時の同じ学年に、もし彼女がいたらと想像すると、とんでもないことになるな」
「六属性にライツ様を超える魔力量、そして天才的な魔力操作。救世主様だからと言われれば納得出来ますが・・・・・・。あ、そういえばハリアスさん、聖魔法について、リオルート様から聞いていますか?」
愛那は聖魔法以外の六属性の魔法を使えるということを公表したが、正確には聖魔法を使えるがどうかの確認はまだしていなかった。
聖魔法使いは稀少で、もし愛那が聖魔法も使えるとしたら、魔物を討伐するという救世主に求める以上のことを人々に期待され、望まれてしまう。
そのことを危惧したナチェルは、愛那が聖魔法を使えるかどうかの確認は保留にしてライツに判断を仰いだ。
そのライツも、その判断は兄のリオルートに相談してからにすると話していたので、モランはリオルートに近いハリアスなら知っているのではと訊ねてみた。
「いや。だが、もしマナ様が聖魔法使いであったとしても、すぐに公表されることはないだろう」
「そうですよね。少なくともこの異常事態が緩和されるまでは・・・・・・。ライツ様はマナさまへの負担を出来るだけ軽くしたいでしょうし。・・・・・・だけど、マナさまが聖魔法も使えるとしたら、すごく心強い」
「モラン。気持ちはわかるが、そんなこと、もう口に出すなよ」
「はい。すみません」
そんな会話をしていた二人はスライム以外の魔物の気配を感じて、そちらへと視線を投げた。
姿は見えない草むらの中。
魔物の気配といっても弱い魔物のものだ。スライムの気配は弱すぎて気づけない者もいるが、このくらいの気配なら誰でも気づくといったレベルのもの。
その時、突然「ひぃあああああぁ」という悲鳴にもならない弱々しい声が聞こえてきてそちらへ顔を向ける。
皆の視線先には愛那がいて、その愛那は顔を強ばらせ、魔物がいる草むらを見つめながら自分の身体を抱きしめていた。
「マナ?」
「マナ様?」
ライツとナチェルが心配そうに愛那の名を呼ぶ。魔物の気配を感じ取っただけにしては様子がおかしい。
「き・・・・・・」
「き?」
「気持ち悪いぃいいいいいいい!!」
愛那の上げた悲鳴に、皆の表情が唖然となった。
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