第9話:緊張するので私からもぜひお断りしたい!



その後ライツと愛那達は城内へ移動し、謁見の間で訪問者の対応をしていたリオルートへフォルフが討伐の戦利品である魔石を献上した。

その魔石の大きさは愛那の拳二つ分くらいあり、討伐したのがかなり強い魔物だったことが想像できる。

 こうして騎士団が討伐した証しである魔石を領主に献上するのはある一定の大きさ以上の魔石と定められている。

 これだけ危険な魔物が領内にいたことを知らせるためだ。

(色は青。水属性の魔物ね)

 献上された魔石を見つめる愛那へとライツが声をかける。

「マナ。昼食を終えたら一緒に討伐に出よう。スライムなどがいる初心者向けの場所があるからそこへ」

「は、はいっ!」

(討伐! 今日行けるんだ! わあ~、ドキドキする!)

「ライツ様」

 そこにフォルフが声を上げた。

「何だ?」

「その討伐、私も一緒に同行させてもらってもよろしいでしょうか?」

(え?)

 愛那がフォルフへ視線をやると、フォルフは胸に右手を当てライツへと一礼する。

「ぜひ、マナ様の実力を拝見したく」

(ええっ!?)

「フォルフ。すまないが今日は遠慮してくれ。マナは本当に討伐経験がない初心者なんだ。実力を見たいというなら今日でなくてもいいだろう?」

(ライツ様! その通りです! 緊張するので私からもぜひお断りしたい!)

「討伐初心者であることは承知しています。多大な期待を押しつけるようなつもりはありません。ただ、六属性に供給と聞いて、その実力の片鱗だけでも見てみたいというのは騎士として当然のこと。それにそれがライツ様のお相手とならばなおさらのことです」

「・・・・・・明日。また同じ時間に出る。その時本隊に問題なければ同行すればいい。だが少人数しか許可しない。おまえと、おまえの側近二人までだ」

 ライツの言葉に微笑を浮かべ「ありがとうございます」と再び手を胸に当ててフォルフは一礼した。


(と、いうことで、明日は騎士団長さん達も討伐に同行するそうです。・・・・・・こうなったら明日のためにも今日やれるだけのことはやる!)

 馬車の中で闘志を燃やす愛那。

 現在ルザハーツ城を出て馬車で討伐場所へと移動している最中である。

 馬車の中にはナチェルと二人きり。ライツ達は馬での移動だ。

(馬。そういえば私、馬に乗れるようになった方がいいのかな? もちろん何でも頑張るつもりではあったけど・・・・・・)

「マナ様? どうかされましたか?」

 愛那が考え込んでいたら、その様子を見て心配したナチェルがそう問いかける。

「あの、私も馬に乗れるようになったほうがいいのかな? と思いまして。私が馬で移動することができれば馬車は必要ないでしょうし。けど、今まで一度も乗馬経験がないので心配になって」

 それを聞いたナチェルは「あぁ」と言って微笑んだ。

「そのような心配は必要ありません。もともと怪我人が出た場合に備えて魔物討伐に馬車は必須ですし、馬に乗る必要があれば二人乗りをすればいいのですから」

「二人乗り・・・・・・」

「そうですね。一度も馬に乗った経験がないならば、不安でしょうから二人乗りの練習はしておいた方がいいかもしれません。私で良ければお付き合いいたします」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る