第8話:ルザハーツ騎士団団長
「ライツ様」
ライツの胸に頭を預けて羞恥に震えていた愛那はその声に顔を上げた。
そこには愛那が初めて見る騎士の男。
(制服の装飾から見て、騎士団の上の人? ライツ様より年上だろうけど、まだ二十代かな?)
「ああ、フォルフ。丁度いい。紹介しよう」
ライツに促されて愛那はそのフォルフと呼ばれた騎士と対面する。
「マナ。彼はルザハーツ騎士団団長、フォルフ・ダルソーランだ。フォルフ、彼女の名はマナ。家名は事情があって今は明かせないが、将来俺の妻になる女性だ。覚えておいてくれ」
その瞬間、ざわっ、とこの場に衝撃が走った。
(・・・・・・・・・・・・妻!?)
愛那もライツの言葉に衝撃を受けた。
(ちょっと待って・・・・・・え? 決定事項ですか? プ、プロポーズは? いえ、もちろんイヤじゃないですよ? 当たり前じゃないですか! ライツ様と結婚して夫婦になるんですよね? 当然です! ライツ様の妻の座は誰にも譲らない!)
愛那は固まったまま頭の中でパニックをおこしていたが、こちらを凝視する視線に気づくとすぐに意識を切り替えた。
微笑んで片足を下げ、両手でスカートの裾を持ち腰を落とす。
「初めまして。マナと申します」
(よし! どんなに動揺していても淑女の挨拶だけは忘れない!)
フォルフは驚いた顔をハッと改め、胸に手を当て頭を下げる。
「失礼しました。お目にかかることができ光栄です。ルザハーツ騎士団団長、フォルフ・ダルソーランと申します」
ライツは一つ頷くと、マナの左肩に手を置きここにいる者全てに知らせるように声を上げた。
「皆には随分待たせてしまったが、俺もようやくこうしてマナという運命の女性に巡り会うことが出来た。残念ながら今のこの国の状況では、すぐに彼女との婚約を公表することは出来ない。だが、だからこそ一刻も早くこの国の平和を取り戻すべく今まで以上に尽力することをここに誓おう。フォルフ、彼女は聖魔法を除いた六属性の魔法使いであり、俺との共通のスキル【供給】を持っている」
再び周囲がざわめいた。
目を見開いて驚きをあらわにしていたフォルフが口を開く。
「六属性に、供給・・・・・・ですか」
「ああ。これから先マナは俺と共に討伐に出ることになる。だが、マナは討伐が未経験だから、しばらく経験値を上げるための時間が必要だ。どちらにせよ俺はこの先ルザハーツ騎士団の本隊とは別行動することになる。もちろん緊急要請があれば合流するが、他の領地の応援要請に応えていくことが多くなるだろう。フォルフ。ルザハーツ騎士団の総括はおまえに預ける。頼んだぞ」
「はっ。承りました」
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