第17話 みにくいアヒルの子

 ある農村で、野生のアヒルが、タマゴを温めておりました。

 アヒルは、アヒル帽子にアヒル羽根、アヒル長靴にアヒル尾羽だけを身に着けて、巨乳で括れで巨尻な、グラマー・ママです。

「あら、タマゴが動いたわ。私の可愛い子供たち」

 やがて、温めていたタマゴが孵化すると、元気な娘たちが生まれてきました。「「「お母さ~ん!」」」

 娘たちはみな、まだ地味な色のアヒル帽子やアヒル羽根、アヒル長靴やアヒル尾羽を身に着けた、裸の幼女です。

 その中で一羽だけ、更に色取りの地味なヒナがおりました。

 末娘です。

「あら、なんだか変わった毛色の子供だわ」

 ママアヒルは気にしませんでしたが、子供たちは、戸惑っています。

「「「わたしたち、この子とは遊びたくないわ」」」

 みにくいアヒルの子は、誰も遊んでくれません。

「みんな姉妹なんだから 仲良くしなさい」

 アヒルママは言いますが、娘たちが毛色の違う末っ子と遊ぶ事は、なかなかありませんでした。

 ある日、アヒルママに連れられて、みんなで草原にやって来ました。

 いつも通り、一人きりで遊んでいた末娘は、みんなとはぐれてしまいます。

「みんな、どこへ行ってしまったの?」

 寂しく不安になった末娘が、家族を探して草むらを走り回っていたら、バーンっと、鉄砲の音が聞こえました。

 この草原には、時々、猟師がやってくるようです。

「に、逃げなくちゃ!」

 一目散で草原から走り出た末娘は、とうとう、家族といた場所も解らなくなってしまいました。

「もう、お家に帰れないわ」

 木陰で身を隠していると、通りかかった村のお婆さんが、泣いている末娘を見つけました。

「おや、変わったヒヨコだね」

 言いながら、お婆さんは末娘を拾い上げて、家へと連れてゆきます。

 お婆さんの家には、ニワトリとネコが同居しておりました。

 ニワトリは、ニワトリ帽子とニワトリ羽根、ニワトリ長靴にニワトリ尾羽だけを身に着けた、グラマーな裸のお姉さんの姿です。

「あなた、タマゴは産める?」

「いいえ、私はまだ タマゴを産めません」

 ネコは、ネコ耳にネコ手袋、ネコ長靴にネコ尻尾だけを身に着けた、大人な裸の女性の姿です。

「あなた、ノドをゴロゴロと鳴らせるかしら?」

「いいえ、私はノドを鳴らせません。水に潜ったりする事が得意です」

「「つまらないわ」」

 ニワトリもネコも、末娘から興味を失いました。

 お婆さんの家にも居場所が無かった末娘は、お婆さんの家から河原へと出て、一羽だけでの生活を始めました。

 草むらに身を隠して空を見上げていると、白くて美しい鳥たちが、優雅に羽ばたいています。

「ああ、私もあんなに綺麗だったら、仲間外れになんて されなかったのに」

 末娘は、羨ましい気持ちで一杯でした。

 たった一羽で、夏の暑さに耐え、秋の恵みを頑張って蓄えて、寒い冬をなんとか乗り越え、そして暖かい春がやってきました。

「そろそろ、水草の新芽が美味しい季節だわ。あら?」

 川面を見ると、白くて美しい鳥が映っています。

 その姿は、白鳥帽子に白鳥の羽根、白鳥の長靴に白鳥の尾羽だけを身に着けた、若くて美しい、均整の取れた裸の美少女の姿です。

「これが、私なの?」

 成長した自分の姿に驚いていると、いつしか空を飛んでいた白鳥たちが、末娘を見つけて降りてきました。

「おお、なんと美しい娘だろう」

 優しく高貴な声に見上げると、目の前には、金髪碧眼イケメン痩せマッチョでシックスパックな、白鳥の王子様が立っておりました。

 王子様は、頭に黄金の冠を乗せていて、白鳥の羽根と白鳥の長靴、白鳥の尾羽と、腰には白鳥の頭が立ち揺れておりました。

「どうか、私の王国へ 私たちとともに、いらしてください」

 自分を知った末娘の胸は、幸せの高鳴りを止められません。

 みにくいアヒルの子は、美しい裸の少女白鳥だったのです。


                       ~終わり~

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