ゲームオーク 誕生秘話! その1

 今日は、ソフィを街のオタクショップに連れていく約束をしてたんだ。


 あんな綺麗な女の子と出掛けれるなんて嬉しいな。

 どうしよう、もしソフィが僕の事が好きで、

告白なんてされたら。


 タハハ! 僕には紅美ちゃんがいるから、それは困っちゃうよ。


 今日の授業も終わり、鼻唄を歌いながら早足で教室を出ると「間宮!」 と後ろから呼び掛けられた。


 その声に反応して振り向くと、ガッチリとした体格の坊主頭の男が僕を見ている。


 誰だコイツは? 同じ学科の奴かな?

教師ではないだろうけど…………。


 人見知りの僕は、知らない人から声を掛けられるのが嫌で、どうも身構えてしまう。


 僕の挙動に、僕が彼の事を認識してないと

伝わったようで「同じ学科の大倉だ」 と名乗ってきた。


「何か用?」


 大学では、なるべく人と関わりたくないので、早くここから立ち去りたい。


「そんなに警戒するなよ。

ところで、お前って動画配信とかやってる?」


 その答えに平静を装って「なんで?」 と聞き返してみたものの、ついにこの日が来てしまった。


 前に天狗さんが動画配信で、僕のフルネームを言っちゃったもんだから、そのまま本名で

活動してたんだ。

 

「お前に似た奴が、天狗の面を着けた男と白人の女の子と一緒に動画に出てたから、もしやと思って気になったんだ」


 間違いない、僕と天狗さんとソフィだ。

これは、マズイぞ!

 

 何とか誤魔化さないと、下手に言い訳して

やぶ蛇になっても厄介だよな。


 こうなったら、無言を通して知らないふりをしよう。


  ……………………。


「どうも、お前に似ているんだ」


 ……………………。


「お前だよな」


 ……………………。


 否定も肯定もせずに沈黙を貫くが、大倉は

探るように、ジッと僕の目を見続ける。


 何だコイツ、思い詰めたような顔で僕を見て…………一体何が目的なんだ?


「間宮、頼みがある!」 


 え、何?何だよ? 

急に頭を下げてきて、怖いよ。


「あの動画配信で、一緒にいた外国人の女の子いるだろ。

あの娘を紹介して欲しい!」


「何でだよ!」


「一目惚れなんだ!

あの娘が気になって仕方がないんだ!」


 大倉が声を上げるものだから、周りからの

視線がこちらに集まって、悪目立ちしている。

 これ以上、無言を通しても騒がれては意味がないい。


 このまま放って置きたいけど、後々面倒なのも嫌なので、他の場所で話を付けるとしよう。



────────



 屋上に繋がる塔屋、ここで大倉の話を聞くことにした。


 動画配信を観て一目惚れか。

大倉の気持ち、本音を言えば分からないでもないんだよ。


 僕も動画配信を観て、紅美ちゃんに一目惚れしたからさ。


 それでも大学の人と関わるのは嫌なんだよ。


「僕も会ってから、まだ何日も経ってないから無理だよ」


「頼む。 この通りだ」

「お前を男と見込んでのお願いだ」

「1回だけでいい」


 大倉は僕が何度断っても、しつこく何度も頭を下げてお願いしてくる。

 これを無下に断ったら、気を悪くして動画

配信の事、言いふらすかもしれないな。


「分かった、条件があるよ。

まず一つ彼女に電話するけど、そこで断られたら諦めること」


「ああ、分かった」


「そして二つ目は、僕の動画配信の事は誰にも言わない。 約束出来る?」


「男と男の約束だ、絶対に守る。

間宮、恩に着る」


「じゃあ、待ってて電話するから」


 天狗さん、この時間『憩いの場天狗』 で働いているよな。


 天狗さんに電話をかけてソフィは今、どこにいるか確認すると、紅美ちゃんと一緒に店の

手伝いをしてると言うので、天狗さんに事情を説明することにした。


「なるほど、その者はソフィに会いたいと言うのだな」


「ええ、そうなんですよ。

いま、忙しいから無理ですよね」


「今、本人に変わる」


 この話はソフィが断ってくれたら、そこで

無しになるので僕としては都合がいい。

なので、断るよう話を持っていく事にしよう。


「おー! マミヤ、ナンデスカ?」

 

「もしもしソフィ、君に会いたいって人がいるんだけど嫌だよね。

嫌でしょ。 だから断るから」


 外国の女の子だから、早口で喋れば訳も分からず、うんと言うと思ったものの、ちゃんと聞き取れたようで「ノゾムトコロヨ」 と返事が返ってきた、


「知らない人だよ? 止めたほうがいいよ」


「ダイジョウブデス。 ワタシのファン、

ワルイヒト、イマセン」 


 ソフィが会う気でいるなら、仕方がないので

彼女が会うって事を大倉に伝える。


「彼女、会うってさ」


「本当か!」


「うん、今からでもいい?」


「ああ、頼む」


 仕方がないけど、約束したので大倉を連れて

『憩いの場 天狗』 に向かう。


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