エピローグ

7話 結局のところ。

 ハッとして目が覚めた。


 目の前には見慣れた天井が広がっていた。


 私は、私はどうなったのだろうか、長い夢を見ていた気がするが……。


 ふと隣を見ると、日付は12月26日に変わっていた。



「んあ? 丸一日寝ていたのか? ああ、まずい、昨日の用事をすっぽかしてしまったか……」



 そう独り言ちた途端、私に昨日の記憶がよみがえった。



「……あの子は、あの子はどこにっ!! 助かったのか!? どこだ、どこだっ……!!」



 私が落ち着きを失ったその時、私の起き上がってベッドのすぐ隣で声がした。



「わたしはここだす〜〜」


「!?」



 振り向くと、なんと、だるまの少女がベッドの端で

両肘りょうひじを付き、ニッコニコとこちらを見ているではないか。



「な、な、なななんっ!?」


「えへへ、わたし、死んじゃったみたいだす〜〜」


「は、はぁ!?」



 何を言っているんだこの子は。



「あのね、あのね、わたしはだいがくせーが好きなので、神さまになってだいがくせーを生きかえらせたのであーる」


「えぇ……」



 ーーそう、あの時、だるま少女は、スィズに従って、世界と盟約を誓った。




 『我、世界の掟に従い誓う。我、自らの死をもって世界の歪みを修正せんとす。我、暫定神より真の神となり、今は神なき人間を守らんとす』




 ーーこうして少女は真の神となり、1人のしがない大学生の担当神として、彼と共に居るという願いを叶えたのであった。



「マジですか」


「マジですです」


「はぁ……理解がほとんどできないが、つまりそういうことなのだな。君がここにいるというのが現実なのだな」


「です〜。だから〜、だいがくせーはだいがくせーで〜」


「……ああ。そして君はーー」




「そう! わたしは、神さま、ですっ!!」




 〜 〜 〜




 後日、私は飲み会の約束をぶっちしたことを謝して、改めて3人で先輩宅にて飲み会をり行った。



「へぇ〜、そんなことがあったのか」



 頬をかなり赤らめた紺野こんの先輩が、12月25日起きた私の話を聞いて、適当に相槌あいずちを打った。



「そうなんです。私としても物凄く不思議な体験でありました」


「お前さん、お前さん」



 急に菊池が話に割り込んできた。



「なんだ、チンパン」


「あー、えっとだな」



 こいつ、すっかりチンパン呼びに慣れやがったな。



「なんだ早く言え。時間は有限だ」


「俺には、お前さんに頭の病院を進めるという選択肢が過ぎっているんだが」



 なんと失礼な。



「黙りたまえ、元よりお前に信じさせようとは思っていない」


「いや、誰も信じねぇよ、あの、あそこでムシャムシャとキャベツ喰ってるあの子が、神だって?」



 そう言って私たちが視線を向けるそこには、だるまの少女が、先輩が用意したキャベツにマヨネーズを大量にかけた物をむさぼっていた。



「うまうまうま」



 うまうまらしい。



「だってなぁ、あんな子、神って言うより、もはやだるま人形じゃねーか」



 菊池がそう言い、紺野先輩が同意する。



「ははっ、違いねー」


「ああ、もういい、信じる信じないはどうでもいい」




 ーー今日は1月3日。あれから9日が経った。



 あれから私の生活はまるで変わった。



 ずっと私のそばについてまわる少女は、相変わらず神に似つかわしくない行動を取るし、私はコーヒーに砂糖とミルクを入れなくなった。




 まあ、だが、これでいいのだ。




 少女が幸せで、私も今、幸せを感じている。




 それが今目の前にある現実で、事実、人生それだけで十分なのだ。

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12月25日、だるま少女。 芝楽 小町 @Shibaraku_Omachi10

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