5日目

「やっぱり聞いておけばよがった……」


 キツネは翌日、街道に出てお地蔵様の横に腰を下ろしていました。

 代わり映えのしない街道にどこにタヌキがいるのか、サッパリ分かりません。

 今日も人間も通る人も少ないですし……。

 昨日、タヌキがヒントをくれそうだったのですが、キツネは怒って聞かなかったのが悪かったようです。


「もう諦めようかな……なんだか、眠たくなってきたわ」」


 キツネが、いつのまにかウトウト眠ってしまいますと、遠くのほうから声が聞こえてきました。


「下にー、下にー。お殿さまのお通りいー!」

「あっ!」


 キツネが起きてみますと、目の前の道を立派な行列が進んできます。どこかの大名様の行列のようですが、駕籠に乗っているお殿様が、どこかで見覚えが……。


「タヌキじゃないの!?」


 キツネはそのお殿様を見て声を上げました。

 駕籠に乗っているお殿様が、太鼓腹のタヌキによく似ているじゃないですか。


「殿に向かって無礼なキツネだな!」


 どうやら本当のお殿様だったようで、怒った家来が飛び出して腰の刀を抜きました。キツネに向かってそのまま刀を振りかざし、キツネを切りつけようとします。


「助けてッ!」


 キツネが悲鳴を上げると、どこからともなくポンポンと太鼓の音が聞こえてきます。

 それに併せて切りつけようとした家来が、踊り始めました。それどころか、キツネが見ている間に他の家来や駕籠担ぎ、お殿様まで踊り出したではないですか。


「♪ポンポコポンのポン!」


 声のするほうを見てみますと、あのタヌキが太鼓腹を叩いています。それに併せて、人間が踊り出し、そのままタヌキは連れ去ってしまいました。


 残されたのはキツネ一匹。

 しばらくしますと、ひょこひょことタヌキが戻ってきます。


「お礼がほしいよね」

「あり、がとう、ごさい、ました」


 タヌキに命を助けてもらった事は確かですが、結局、悔しく手しかだかないキツネ。


「まあ勝負は、僕の勝ちかな」

「結局、あなたは化けていないじゃないの!」

「バレたか……」


 キツネの言うとおりタヌキは一度も化けていません。


「なんで、アタイと勝負なんて……」


 そうなりますと、キツネの言うとおり、最初から勝負何てしていなかったことにならないでしょうか。

 タヌキは応えます。


「きみは化けるのが上手い。僕は知恵が回る。

 どうだろう、僕らが組めばもっと上手く人間をだませられるとは思わないかい?」


〈了〉

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きみの嘘、僕の恋心~コンコンとポンポン 大月クマ @smurakam1978

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