第5話

「まぁいい。時間はたっぷりあるからな。俺はお前と契約するまでは、どうせ帰れないんだ。いずれお前の方から、サインさせてくれと懇願するようになるのは、分かっている」


「うるせー、お前なんか誰が信じられっかよ、さっさと帰れ」


「なんだと?」


いい加減、俺だって我慢の限界だ。


たかだか人間ごときに、こんなデカい態度をとられる筋合いはない。


「俺が大人しく頼んでいる間に、決着をつけといた方がいいぞ。じゃないと、お前は本当に大変な目にあうことになる」


俺は、悪魔だ。


しかも、ただの悪魔なんかじゃない。


強力な魔力を有する、魔界公爵の息子だ。


「お前が本当に信じられないというのなら、今からそれを見せてやろう」


空中に、魔方陣を描く。


さて、どんな魔法でこいつをビビらせてやろうか。


「はー、めんどくせぇのが来ちゃったなぁ」


涼介は頭をぼりぼりと掻いてから、机の上に広げてあった参考書を閉じると、トントンと机に打ち付けてから、本棚に戻した。


「あのさぁ、お祓いとかしてあげちゃったらいいわけ? なに、塩? とりあえず塩撒くとか?」


「撒くな!」


「あ、やっぱ塩苦手なんだ」


「違う!」


こいつは、俺を何だと思ってるんだ!


「悪魔に塩は通用しない!」

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