第6話

「あぁ、ゴメンゴメン、じゃ、にんにくか? いやぁ~悪いんだけどさぁ、今うちに生のにんにくないんだよね、日を改めてもらえないかな。そん時にはちゃんとつき合ってやっから」


「にんにくも無効!」


涼介の目が、冷たく俺をにらむ。


「あのさぁ、実は俺、本当は知らない人と遊ぶ趣味ないんだよね。ほら、君さ、悪魔なんでしょ、さっさと帰りなさいよ。あ、それとも、もしかして迷子?」


涼介の手が、俺の背中に触れた。


追い出そうとして、背中を押される。


初めて人間に触れられた感触が、服の上からでも伝わってきた。


「俺に触るな」


初めての感触に、ドキドキする。


涼介は、ぱっと手を離した。


「なに? 悪魔にも、パーソナルスペースとかあるわけ?」


「なにそれ」


俺はとっさにメモを取り出した。


「人間の生態について、勉強中なんだ」


「そこはキャラ守ろうよ」


書き留める俺を見ながら、涼介は大きなため息をつく。


「えっと、あのさぁ、もうすぐ夕飯の用意をしないといけないんだよね。迷惑なんで、帰ってもらえます?」


「だから、契約してくれれば帰るって」


俺はペンと契約書を突きつける。


涼介はなにも言わず、くるりと背を向けた。


そのまま部屋を出て、階段を下りる。


「おい、こら、どこへ行く!」


俺はあっけにとられたまま、後を追いかけた。

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