第4話

「結構ですので、他をあたって下さい」


「いや、こんなおいしい話しを他にふる奴なんか、いねぇだろ」


「いらねぇっつってんだ。よそでやれ」


涼介は、契約書を突き返す。


「ほら、受け取れ、なんだよ、さっさと受け取れよ」


「あ、あぁ。うん。それはちょっと……」


本来なら、さっさとそうしたいところだが、親父の矢がコイツの頭に刺さっている以上、俺はコイツと契約を取らなければ、息子として、偉大なる悪魔公爵家の跡取り息子として、認められない。


「俺はお前と契約しなければならない理由があるんだ」


「やっぱ何か裏があるし!」


涼介はそれを俺の胸に押しつけると、追い払うように手を振った。


「もういいから帰って。お疲れさまでした。他に需要はあると思うので、そっちの方に行ってください」


「帰ってほしけりゃ契約しろ! それがお前の望みなら、契約後に俺はお前の目の前から姿を消す! 二度とここへは来ない!」


涼介は小さな金属板を取り出した。


その光る板の表面を指でなぞる。


「えぇっと、こういう場合は不法侵入で、警察に連絡すればいいのかなぁ」


「連絡するな!」


「じゃあ出て行け!」


大きな声を出すと、涼介は人間のくせにそれなりの迫力がある。


俺は一歩も引く気のない構えで、奴を見上げた。


「おい、どこの誰だか知らねぇが、いきなり窓から入ってきて、なんなんだよ、さっさと帰れよ」


くっそ。


どうしてこうも面倒な奴の頭に、矢が刺さってんだ。


その後頭部に突き刺さった金の矢が、何よりも憎らしい。


しかたない。


作戦をちゃんと練り直してから出直しだ。

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