第5話 早速奇襲をしようじゃないか

「ささ、ネクロ殿。お座りくだされ」


「は、はぁ…」


木製の椅子に座り、私は例の若様の出を待つ。

少しすると上からドタドタと走る音が聞こえる。


「爺や!最強の人形使いを連れてきたのかい!?」


階段を降りてきた人は金髪の青年だった。頬の部分に切り傷のようなものがある。誰かと争ったのかな?


「はい、そうです。彼があの「ネクロ・ヴァルハラ」です」


老人がそう言うと青年が私に近づき、握手を求める。

無論、握手はするけど。


「あなたがネクロさんですね!僕の名はアンネと申します!」


「はははっ。よろしくね」


軽く挨拶を終わらせた後、早速本題に入る。


「それで、戦略はどうするんだ?」


「先ずは……」













しばらくして夜。

私はアンネを連れ、時計塔の近くに来ていた。


「では、作戦通りに」


「まぁ待ちたまえアンネ君。いくら剣術に自信があるとはいえ、一人で裏に回るのは危険だ」


カバンの中をごそごそとする。取り出したのは金庫頭で肉屋の服装をした大男のような姿をした小さい人形だった。


「【デスキーパードール】」


そう言って取り出した人形を地面に放り投げる。

投げられた人形は縮小化が解除され、身の丈二メートルの大男へと大きさが変わる。


デスキーパードール。私が二番目に愛用している人形だ。材質はアダマンタイトで出来た硬い人形。防衛や殲滅に特化した特殊ドールだ。無論、頭の金庫もアダマンタイトで出来てる。はっきり言うと賢い人形だ。


「命令だ。この青年と共にこの時計塔の裏に回り、雑魚どもを蹴散らしてきたまえ。奴隷がいれば開放に手を貸せ。以上だ」


『御意』


命令を聞いたデスキーパーは頭を縦に振る。


「さすがネクロ殿。あなたの人形が私の護衛役に……」


「さて、作戦開始だ。気を引き締めていかないとね」


そう言ってはぐらかし、作戦通り事を進める。





(正門側)


「敵の兵士は正面に三人。全員ロングソードとショートスピアで武装。櫓には魔法銃で武装した狙撃手が一人。警備が手薄だねぇ」


さすがにここまで侵入者が来る事は考えてなかったのかな?

まぁ奥に手練れがいる可能性があるから油断しない事に越した事はないんだけどね。


試しに正面に立つ。それに気づいた兵士は止まれと言うが、生憎止まる気はない。

咄嗟に剣を抜き、軽く一人の兵士を叩き斬る。


「貴様、何者だ!」


1:こんばんわ。正義の味方です

2:地獄からの使いだ。君達全員を血祭りにあげてやるよ!


「地獄からの使いだ。君達全員を血祭りにあげてやるよ!」


「何だと貴様ぁ!」


残り二人の刀剣兵が襲い掛かる。


「そんな一気に来るとつまらないよ?」


私は無詠唱で魔法を櫓に向けて放つ。

飛んで行ったのは小さい火の玉みたいなもの。だがこの魔法は……。


「何だこの火の玉はグワァァ!!!」


櫓に火の玉が直撃するとものすごい勢いで大きな火柱ができる。

先ほど放った魔法は火炎属性魔法の【大火炎柱インフェルノピラー】。

一応初級の魔法で、魔力の量次第で火力をあげれる汎用性の高い魔法だ。


喰らった兵士はもう消し炭だろうな。南無阿弥陀仏だ。


さっきまで私を斬りにかかろうとしていた兵士二人が硬直する。

そりゃあ……あんな小さい火の玉がでかい火柱に変化するのは驚くだろうね。


「それで?仲間は呼んでもいいよ?屍が増える一方になるが」


「じ……冗談じゃねぇ!こんなバケモンに戦いに挑んでも勝てるわけねぇだろ!」


「あ……待ってくれぇ!」


あらら、逃げたか。まぁ剣を振る手間が省けたからいいか。



(裏門側)


「ぐあっ!!」


「ひぃぃ!何だこの化け物は!」


裏門にてデスキーパーとアンネは少しずつながら見張りの兵士を排除していっている。今のところ味方に被害は出ておらず、多くの見張りの兵士はデスキーパーの持つ処刑用のハンマーの餌食になって、辺りは撲殺された敵兵の山ができていた。


(さすが、ネクロ殿の人形。強い!この調子なら、この街の住人の悩みの根源を断つことができる!)


「だ……誰かー!この化け物を止めてくれぇ!」


叫んで助けを求める兵士達。中へと侵入したアンネ達が最初に向かったのは奴隷、攫われた女子供達を収監している地下室だった。


鍵のかかった部屋の扉をデスキーパーがこじ開け、看守を撲殺する。

後に牢を壊し、奴隷たちを救出する。


ここまでは簡単だった。大半の兵士はデスキーパーの手で皆殺しにされてるのだから。


「後はネクロ殿が黒幕を片付ければいい。戻りましょう。デスキーパーさん」


『御意』














時計塔の内部が騒がしくなったとたん。辺りはガチャガチャと重装の鎧を着た兵隊達が主を守るべく階段付近に集結していた。


「へぇ?そこでそういう手駒ねぇ……。不足はないよ!」


私は鞘から魔剣を抜き、重装の兵士に突撃していった。


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