第6話 同じ人形使い

突撃した私はとっさに飛び上がり、魔法を行使する。

小さい魔法陣から巨大な雷撃が発生し、重装兵に直撃する。


今放った魔法は【電雷波プラズマ・ブラスト】。雷属性の初級魔法で、唯一の範囲攻撃魔法だ。こいつがなければロクな魔法使いはいない。


「ホラホラ。邪魔だよ」


束になって戦闘態勢に入っている兵士を次々となぎ倒し、最上階へとたどり着く直前だった。


「むっ!」


突然頭上からナイフの雨が降り注ぐ。即座に魔剣を抜き、自分に飛んでくるナイフを全て叩き落としながら最上階へ進む。


「低次元な足掻きだなぁ」


「そうか?」


最上階に着いた時、奥の方で一人の男が軽そうな鎧を着た女騎士一人を従えて待ち構えていた。


「まさか、たかが人形使いの襲撃に手間取るとはな」


「……その隣にいる女騎士ちゃんは御嫁さんかい?にしては若いけど」


「違う、私の人形だ」


へぇ……この子がねぇ……。となると同業者の支配下だったという事か。

それにしても見た目は生きてるように見えるけど、本当に人形なのかねぇ?

リアリティを求めすぎてる気が過ぎてるけど……。


「じゃあこっちも人形を出すか」


カバンを漁る。丁度良いものは……これだ!


「行ってこい。マルトちゃん!」


取り出して投げたのは赤髪の赤眼で赤いドレスを着た少女の人形だった。縮小化が解除され、見た目は十五~六歳くらいの少女へと大きさを変えた。無論服も彼女と同じ大きさだ。


「命令だ。あの男を殺れ。女騎士は私が押さえておくよ」


『わかりました。御主人様』


マルト———赤く染まった髪と眼、深紅に染まったドレスが似合う。特殊な魔石二つとオリハルコンで出来た人形だ。私のカバンに入った戦闘要員の人形の中では三番目に当たる大戦力の人形でメイン火力。


使用素材は自我の魔石と知恵の魔石、そして世界で最も軽く硬いので有名な鉱石、オリハルコンだ。最も硬く、素早い攻撃と重い攻撃を得意とした人形で、主力武器は双剣と戦斧。


要は双剣士フェンサーで重い攻撃もできる重戦士ヘビーファイターにもなるバランス特化型だ。我ながら傑作だよ、全く。後は知識と自我の魔石を使っているため、人間と同じ感情を持っている。デスキーパーと同じく、賢い子でもあるよ。


「フン。そんな人形で吾輩に挑むとはいい度胸だ!行け、マリン。あの小生意気な人形使いを殺せ!」


『承知』


命令と同時にマリンとマルトが動く、互いにすれ違い、それぞれの人形使いに戦いを挑んだ。




『覚悟』


マリンは剣を振り上げ、斬らんと一気に近づく。


「ふーん?じゃあ私は君を確かめよう」


振り下ろされた剣を避け、右手でマリンの胸を触り、揉む。


『!?!?』


柔らかい。脈拍も感じるし、何より温かい。

本当に人形かね?


マリンの頬が赤くなり、揉んでいる右手を振りほどく。


『なっ……何をする!!』


「君、本当に人形かい?人間じゃないの?」


その言葉にマリンは言い返した。


『違う!私はザツマ様の愛用の人形だ!!』


言い切るねぇ……ならこれはどうかな?

次のマリンの攻撃を躱し、次は尻を触る。


『!?!?』


うん、柔らかい。これ絶対人形じゃないなこれ。


『ご主人様!私の前で見知らぬ女にちょっかい出さないでください!』


やべ……マルトちゃんに怒られた。確認しただけだったんだけど……厳しいなぁ。


「あーごめん。ちょっと気になってたからね。確認したんだ。これで片付けるよ」


私はマリンに指をさし、魔法を行使した。


「【人形停止ドールダウン】」


『あ……』


突然マリンが地に伏せ、寝息を立てて戦闘不能になった。


人形停止ドールダウン】は相手の人形、魔法生物の活動を停止させる。

人形使いの基本中の魔法だ。ただ、相手が人形や魔法生物ではなく人間といった生命を持つものは寝てしまうのだ。


触った時の感触で分かった。マリンは人形じゃない。れっきとした人間だ。

だから寝た。簡単な事だよ。


「マリン!」


『隙あり!』


倒れた人形(人間)に駆け寄ろうとしたザツマに一閃が走る。

マルトの双剣の刃が真っ赤に染まり、ザツマという悪党の首が飛んだ。


「『抹殺完了』」


ちょっとやり過ぎたかな?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る