第4話 何か面倒事があるみたいで

あれから数時間、ようやく街に着いた。

私は馬車から降り、去ってゆく馬車を見届ける。


「彼女らの旅に人形師の祈りあれ…」


そう言って私は街に入る。街の名は「ギルネス」。私が数千年前、よくこの街に寄っては子供たちに人形劇をして楽しませてたっけなぁ……。


しかし入ってきたとたん、辺りは静かになっていた。数千年前とは違って賑やかさを感じない。いつの間にか治安が悪い方向にいったのかな?


それとも店が開いてない?気になるなぁ。


あちこち歩いていると一人の老人が路上の端に設置されている椅子に腰を下ろしていた。


「やぁ、ご老体。一人で散歩かい?」


「おお……その声、実に若い。お主は?」


私は軽く挨拶と自己紹介を済ませ、老人の横に座る。


「ネクロ殿……でしたな。何故、この街に?」


「ちょっとね。外の世界がどんな感じになってるのか気になってね。これから旅をしようとしてたんだ」


少し笑った後、老人が口を開く。


「本当にあのネクロ殿なら、儂の…いやこの街に住む住人達の悩みを聞いてくださりませぬか?」


「うん?個人的な悩みかと思ったけど、どうしたんだい?」


しかもこの街に住む住人達の悩みと来た。割とぶっ飛んでるが、面白そうだ。


「実は、この街を救ってほしいのです」


「……!」


救ってほしい!?この街に何があったんだい!?


「詳しく聞こう」


「お主が館に籠ってる間。勇者と魔王、両者が倒れ、あちこちでは紛争が巻き起こったのです。それを逆手に取り、ザツマという男がこの街の主導権を握り、この街を乗っ取ったのじゃ」


あらー……悪化してたのね。うんうん。


「女子供は攫われ、奴隷商人どもはでかい顔をして、夜な夜な人を攫っては奴隷として売り出しておるのじゃ。他の住人達はザツマの力に恐れをなして、誰も反論できん。この街は……奴が作った地獄に変わってしまったのじゃ」


「おっかないねぇ……最近の国会は色欲と金の亡者しかいないのかい?」


しかし、この街によく来てた私だ。さすがにそれは見過ごせない。

人攫い、よくやるもんだねぇ……金ってものは働けば手に入るんだ。別に奴隷にして売り出すのは無い気がするがねぇ……。


「わかった。やってみよう。ザツマという男の抹殺と奴隷商を懲らしめてくればいいんだね」


それを言った時、老人の表情が変わる。


「ほ……本当か!?」


「ああ、良いじゃないか。久しぶりに悪党を退治してあげようじゃないか」


それにしても奴隷商に街を支配する男か、腕のあるやつならいいけど。


「単刀直入に言うけど、普段、奴隷商人はどこから現れるんだい?」


望みを聞いてくれたのか、老人がその場所を教えてくれた。

どうやらそいつらはこの街の東にある大きな時計塔に拠点を構えているらしい。

格好の的すぎるけど、まぁわかりやすいところにいるわけだ。手間が省ける。


「ふむ、けど……この戦いの後は私一人では処理できない。そこで老人。私がそれを終わらせた後、どうするか考えてるのかい?」


「それなら心配無用じゃ。この街を治める希望はすでに決まっておる」


へぇ、となると怖いのはそいつらの武力って訳か。


「ならその人物に会いたい。会えるかい?」


「任せくだされ。こっちじゃ」


私は老人の後に続き、一軒の家の前に止まる。


「若様。只今戻りました」


そう言うと扉がひとりでに開く。成程、変な奴が入ってこないように魔法で閉めていたのか。


「お邪魔するよ」



入った時の光景はボロ屋並みにひどいひどい。

これはヤバイな。


それに若様となると貴族の方だろうか?

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