第3話 旅に出ようじゃないか

さて、出たのは良い。


先ずは街に行ってみよう。私の記憶を辿っていくと、「ギルネス」という街が近かったはず。


「もうなくなってたりして」


笑いながら、歩み始める。広がる平原。たまに見かけるのは多くの人を乗せた馬車。乗っている人間は剣やら槍、見たことない細い筒状の何か。たぶん噂の「魔法銃」というものだろう。良いデザインをしているが、私も遠距離武器は欲しかったんだよね。


クロスボウは私の腕には合わなかったし、何より装填が面倒だったからなぁ。


私も買えるだろうか?少し楽しみが増えた。

その反動で不安も出たけど。何とかなるだろう。


それにしても。


「……」


馬車に乗っている人、大半が女性だ。しかも私を見るなり、ぼそぼそと何か言ってるし。私、何かした?取りあえず、邪魔になりそうだから避けよう。








今、私は近くの街までタダ乗りで揺られている。


金がないから街に着くまで護衛って訳。まぁここら辺は魔物は弱いから特に出番はない感じかな?このまま街に着ければ問題無しなんだけどね。


その時だった。


ガタン



「?」


突然馬車の進みが止まる。賊でも出たのだろうか?

少しだけ顔を出すと、魔物が10体くらいいる。


「魔物か!」


乗っていた女性が馬車から降り、剣を構える。

もう一人の女性も馬車から降りては魔法銃を構えた。


魔物はオーガとジャイアントオークか。数的に半々の数。私にとって雑魚に等しいが、飛び出した二人はどこまで戦えるか見物しておくか。


オーガは珍しく金棒持ち、ジャイアントオークはなまくらの大剣を所持している。

全員接近戦特化型か、二人とも強そうだし大丈夫だね。


「はあぁぁ!」


「援護するぞ!」


良い声の掛け合いと連携が魔物たちを押してる。出番がないから空でも眺めてようかなと思った矢先だった。


「おい!護衛なんだろ!戦え!数的にこっちが不利だ!」


いいじゃん。攻撃を往なしながら反撃カウンターを喰らわせて押してるんだから、問題ないでしょ。


「どうしようかなぁ」


迷っている時、魔法銃を持っていた女性は焦り顔になる。


「拙い!魔力切れになった!」


「無駄撃ちするからだ!」


あーあ……せっかく楽して街に行こうとしていた計画プランがもう崩壊したよ。

私は馬車から降り、鞘から魔剣を抜く。


「仕方ないねぇ」


抜いた魔剣が虹色に輝く。その輝きを見た魔物たちは立ち止まる。


「じゃあまずは初歩的な技でも撃っておくか」


魔剣を構え、刃に魔力を込めた後、右横一直線に薙ぎ払う。


「【闇波動斬ダークウェーブ・スラッシュ】」


放たれた黒い鎌鼬が10体中8体のオーガとジャイアントオークを一撃で両断する。続けて私は残った2体の魔物に突撃する。


魔剣は黒い炎と風を纏いはじめ、対象を滅さんとする力を放つ。


「【黒炎風刃こくえんふうじん】」


私が横に一回転すると風と炎と斬撃が合わさった竜巻が発生し、2体の魔物を巻き込む。巻き込まれた魔物は跡形も残らず、消し飛ばされる。


目前の敵がいなくなった事を確認した後、馬車の方を振り向く。

戦ってくれた女性二人と騎手、残りの乗客が私に対し、驚愕な表情になっていた。


「魔物は倒したよ?」


「アンタ……魔剣士だったの?」


「は?違うよ?」


私が否定しようとした時、魔法銃を持ってた女性がツッコんだ。


「いやいや、あんなにすごい斬撃を放てるのは魔剣士か魔族の連中くらいよ!?」


「アンタ…何者?」


何か面倒だなぁ……。


「私?ネクロ・ヴァルハラ。ただの人形使いだけど?」


その言葉に二人は「嘘つけ!」と言って怒る。事実なんだけど……。


「では何だ?人形を使うまでもないほど、あいつらは弱いというのか?」


「うん。だから私は何もしない感じにしてたんだけど」


それを聞いた二人は敗北を味わったような表情へと落ちていた。


「は……ははは……私はただの人形使いに劣っていたというのか?」


ヤバイ、空気が悪化した。

何とかしないと…。


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