episode2 手抜き過ぎる村の名前

 マジか、あの(自称)神、本気で転移させてっし。何故か公用語なのも(まあこれは全ゲーム同様だが)RPGっぽい。しかも俺に話しかけている貴族っぽい男……こいつ、俺の事『予言書に書いてあった勇者』とかなんとか言ったよな。

 ……なんか、やっぱり既に誰かが作った事あるような設定の世界だな。

 とりあえずいつまでも寝転がっていたら痛いだけだし、とりあえず起きることにした。立ってみて分かったが、話しかけてきた男はかなりの高身長。180センチくらいはありそうだ。

 いかにも貴族ですっていう青と白の豪華な服、手入れされてあるブロンドの髪、大きな目、鼻筋は通ってるし、スタイルだって文句ナシ。三次元に行ってみろ、モテモテだろこいつ。


「大丈夫だが……此処どこだよ。それに、予言書に書いてあった勇者って」

「此処はだよ」

「は?」

「ん?」


 いや、は? 何その地名。国名でフラグ立ってるじゃん。

 この男……存在キラキラ野郎は俺が何に引っ掛かっているのかまるで分からないみたいだけど、生まれた時から住んでたら違和感感じないのか?


「平穏だった国? 平穏な国とかじゃなくて?」

「うん、僕の先祖が建国してからずっとこの国名だよ」

「マジかよ」


 存在キラキラ野郎は、何かあるの? という純粋な疑問符を浮かべていた。

 国名はツッコミしたくなるし、村名は適当だし……手抜きすぎないか、このRPG。

 ま、まあ、とにもかくにも、クリア放棄すれば死に至るようなこの状況から早く抜け出したい。おとなしくストーリーを進めることにしよう。


「地名には驚いたけど、俺が勇者って事は魔王でも倒せばいいんだよな」

「そう。最近、大昔に眠った魔王が覚醒しちゃって魔物がたくさん現れるようになったんだ。……えっと、予言書には、まず祖父……国王に会わせる必要がある、とか書いてあったな。町を軽く案内しながら城に向かおう。僕の名前はルーカス、君は?」

「晴則だ」

「分かった。ハルノリ、行こうか」



「ハルノリが倒れてたのは、ちょうど商店街と住宅地の境。住宅地には8万人、この国の人口の8割くらいが住んでいる。商店街には八百屋や武器屋が多く立ち並んでいるよ」


 店名などはなく、八百屋なら白菜、武器屋なら剣の看板が壁に付いているだけで、他は背中の方にある住宅と変わらない。ゲームのグラフィックもそんな感じだったはず。それでも、歩いていくと__国王城に近くなると__少し変化があった。まあ、一つ一つの建物が少々大きくなっただけだが。

 そのまま歩き、城に続く長い階段の前でルーカスは止まった。


「祖父はもう、この国の平均寿命を越えている。体も弱くなってきてるし、いつ亡くなるか分からない。でも次に国王になる父は乱暴で……言ってしまえば性格が悪くて、なんでもすぐに軍を派遣し武力だ武力だと言ってくる。そうなってから君が冒険に行くのは危険だ。最短に近い時間で終わらせないと」


 ……なんか、めっちゃフラグな気がしてきた。

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ベタなRPGの勇者になった件について 幸野曇 @sachino_kumori

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