第3話 無双の予感

「はあ…はあ…。シノン様、中身が僕だって知ってたでしょう…」

「さあ?なんのことかしら?」

「ちょっ!そんなことより大事なことが!」

「「大事なこと?」」

「リムル様、今、人間の姿に変身しましたよね?」

「…ん、まあ確かにそうですね」

「こっちに来る前からそんな能力持ってた…なんてことありませんよね?」

「当たり前でしょう!!」

「つまり、ですよ?」


私達は、名前を使っていたキャラクターの姿になった状態でこの世界に来た。そして、リムル様は原作のリムル様の擬態能力を使えるようになっている。あの能力を使うためには擬態する対象を取り込まないと変身できないという設定だったはずなのにいきなり使えている。つまり、だ。


「…なるほど」

「ふふん、シノン様は察したようですね!これが何を意味するか!!!」


私は、いつかのアニメで観たユエの得意魔法をイメージし―――


「『五天龍』!!!」


各属性の魔法でその身は創られ、重力魔法による力場であらゆる敵を引き寄せて塵に返す。そんな、ユエの魔法の極致ともいえる五体の龍が顕現する―――!!


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」


みんながその威容に歓声を上げる。


私はフッ――と手を翳して五体の龍を無に還す。


「――こんな感じで、キャラクターの能力が使えるようになってるみたいですね」

「「「「マジか!?!?」」」」


ものは試し、といったか感じで各々色々な技を繰り出してみている。


リムル様はヴェルドラソードで素振りしてみたり、色々な魔法を繰り出したり。


ヒースクリフ様と赤眼のザザさんは神聖剣と針剣エストック剣技ソードスキルを色々試したり。


ペテルギウス様は『見えざる手』をウネウネと動かしてみているようだ。(スバルにしか見えないはずなのにうっすらと見えていた。なぜかは分からないが)


シノン様はへカートⅡを色々眺めたり、どこから取り出したのか光剣フォトンソードで片手剣の剣技ソードスキルを出してみたりしている。



そんな感じでそれぞれ好きなことをして時間を潰していたときのこと。


「近くに魔物がいるみたいです!方角的には――あっちです!」


そう言って私が指さした方をみんなで注視すると、200mほど先に禍々しい瘴気を身に纏い、ゆっくりとこっちに近づいてくる漆黒の馬の姿が。だが、当然ながら普通の馬とは違って――


「角?ユニコーン的な?」


誰かがそう漏らす。

そう。魔物の馬の頭には、鋭い角が。物語でよくいるユニコーン的なヤツかと思うが…


「まあ、あんだけエグい見た目しててそんな神聖な感じの生き物なわけないですよね!さあ、初魔物は誰が倒しましょうか!」

「じゃんけんで!」

「「「「「了解!!」」」」



「ふふん、やはり初キルはリーダーの私のものね」


じゃんけんに勝ったシノン様が得意げに言う。


「まずは小手調べに…」


シノン様はその場に伏せるとへカートⅡの二脚バイポッドを立ててスコープを覗き込み、照準を合わせる。もう、これだけで一枚のポスターが完成するんじゃないかってぐらいのかっこいい姿。私がそんなことを思っていると、


パアァァンッ!!


へカートⅡの銃口が火を吹いた。シノン様の身長ほどの大きさの対物ライフルから放たれる50口径弾は、1.8km先の標的をも消し飛ばす威力を持つ。そんな化け物ライフルにすれば200mなんて無いに等しい距離。

シノンの超絶技巧によってへカートⅡから放たれた銃弾は狙い違わずユニコーン(暫定)の眉間を捉え―――――



頭部を跡形もなく消し飛ばした。


そして――――



「あれ?インベントリになにかアイテムが…」


そう言ってシノン様が取り出したのは、あのユニコーン(笑)のものと思われる角。


「あれ、でもさっき消し飛ばしてましたよね?」

「もしかして、ドロップ品は自動回収される仕様だったり?」


さっきユニコーン(爆)がいたところを見ると、残っていたはずの胴体まで全て完全に消滅している。


「えーっと、そうっぽいですね。しっかりと死体も消えてます」

「そういやあいつの強さってどんなもんだったんでしょうね?」

「さあ…へカートⅡの弾は明らかにオーバーキルだったんで全く分からないですね」


当然、不意打ちで頭部が爆裂してそのまま仕様で消滅した敵の強さなんか分かるわけがない。


「あ、じゃあ自分その角を『鑑定』しましょうか?確かシエルの能力でそんなのがあったような…。シエル、一応みんなにも伝えてもらえるかな?」


『申し訳ありません。この世界に転移してから色々と調べようとしていたのですが何者かによって私の能力が妨害され、あまり詳しい情報を手に入れることが出来ておりません。従って、彼の魔獣の名前や特性、能力などはさっぱりです。ただ、リムル様の知識にある武器:へカートⅡの威力と他の魔獣のデータとの比較、観察した肉体構成等による防御力や敏捷性の計算により、スキルを抜きにした純粋な戦闘能力ではテンペストのある世界でいうところの『名付きネームド上位魔将アークデーモン、つまり悪魔公デーモンロードディアブロ様と同じくらいかそれ以上かと思われます』


「「「「「「「………」」」」」」」


『また、その角についてなのですが、その角に内包される魔力量はヴェルドラ様の保有する魔力量と同じくらいかと思われます。あ、爆発等の危険は無いようなのでご安心を。シノン様、全力投球しようとしなくて大丈夫です。用途はまだわかりませんが、武器の材料にするにしてもポーションの材料にするにしてもかなり良いものが出来ると思われます』


「「「「「「「………」」」」」」」


うん、ディアブロさんの強さはみんな大体知ってる。ヴェルドラさんの強さがエグいのも知ってる。それをワンパンするシノン様もだけど、それを余裕で鑑定しちゃうシエルさんやばくないっすか!?

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