「深夜の会議室」「雀」「眠る」

 その雀は実に豊かな商才に恵まれていた。しかし見た目が雀なので(中身も雀だが)、一般社会ではなかなか受け入れられない。私はそんな雀の窮状きゅうじょうを見かね、わが社の設備を深夜だけ貸し出すことにした。雀からはとても感謝されている。

 ある日の深夜、私は定期監査という名目で雀たちの仕事ぶりを見学することになった。五~六羽の雀がぴーちくぱーちくとさえずりながら、彼らの未来を真剣に論じている。

「しかるにこの新商品はJKをターゲットにするぴちゅ。都市圏でこれだけの売り上げが見込めるぴちゅ」

「われわれのレーゾンデートルを今一度再確認するぴちゅ」

「アウフヘーベンするぴちゅ」

 難しい専門用語が会議室の中を縦横無尽に飛び交い、私はいつしか睡魔に耐え切れず眠ってしまった。

 翌朝、空っぽの会議室で目を覚ますと、机の上に手のひら一杯の雑穀や菓子パンのかけらや虫の死骸が無造作に置かれていた。今週分の謝礼ということらしい。

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