「体育館」「アイマスク」「掻く」

 観測史上最大の大型台風が上陸するということなので、近所の体育館に避難することにした。体育館ではすでに先客が何人もたむろしていた。私はすみっこの方に寝転がってプラトンの『パイドロス』を読んでみたが、雨風の音がすさまじく読書どころではない。仕方なくアイマスクと耳栓で目と耳をふさぎ、大人しく寝ることにする。

 夢うつつの中で、なぜか二頭の巨大な馬がぼりぼりと体育館の屋根をかじっているのが見えた。うなされながらアイマスクをはがすと、天井から雨漏っているらしく、私の体がぐっしょりと濡れていた。胸の辺りに痒みを感じ、ぽりぽりと指で掻く。夜はまだ長そうだ。

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